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静かな波立ち2

「亜樹が寝てくれないと、俺が、心配で体調崩しそう」 僕が感慨にも似た気持ちに浸っていると、コウが悲しそうな声音で言う。 「え……」 「だから寝よ?」 僕が喋るのに慣れる間、コウは僕の扱い方を学んでしまったということだろう。 こんなの僕を言いくるめるためとわかっていても、僕の心には罪悪感が降ってくる。 「……ずるい」 ぽろりとこぼれ出た言葉。 今のは言い過ぎかもと焦ってコウを見ると、彼はどこか嬉しそうに微笑んでいた。 そして僕の手を取って布団へ導く。当たり前のようにコウも一緒に入ってきて、心臓の鼓動が早まる。 「……帰らなくて、いいの?」 「そうやってまた勉強続ける気でしょ」 「や、ちが……ほんとに……」 「わかってる。でも前も言ったけど大丈夫だから」 「うん……」 お互い天井を見て、会話を続ける。 肩が触れそうで触れない。そんな距離に緊張する。 コウはどうなのだろう。どう思っているのだろう。僕としてはこんな窮屈な寝方をさせてしまうのはやっぱり申し訳ない。しかも二度目だし。 「二回も泊めてもらってごめんね」 「えっ、いや……どっちも僕のせい、だから……」 「そんなことないって。俺が好きでやってること。非があるとしたら俺の方」 「……僕は……嬉しい、から、大丈夫だよ……」 「そっか。俺も嬉しいよ」 コウとこんな些細な話をしていると、心がぽかぽか温かくなってくる。幸せがゆっくり体に染み渡っていくよう。 幸せと、それから寝転んでいることもあって、だんだん眠くなってきた。 「じゃあ、おやすみ、亜樹」 「おやすみ、コウ……」 するとタイミングよくコウが言ってくれて、僕も同じ言葉を返す。するとそれを合図にしたかのように、急に眠気は増す。 それに従って目を閉じた。

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