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静かな波立ち6

コウが来ない数日間の気持ちは自分自身にもよく理解できなかった。 最初この提案をされた時は確かに悲しかったし、寂しかったし、辛かった。この期間中だってそれを感じていたはずなのに、驚くほど冷静で頭が冴えていたのだ。 おかげでテストはいつも通りよくできた。 ただまるで感情が麻痺してしまったかのような、空虚な今の僕が些か恐ろしい。これが防衛反応ならいいのだけど……。 もし、そうでなかったら。 これからコウに会っても、前のような気持ちを抱けないのかも、と思うとすごく怖い。 「亜樹」 窓辺に体育座りしていたら、頭上から声がかかる。ぴくっと体は反応して、顔を上げるのを一瞬ためらう。でもいつまでもそうしてるわけにもいかず、観念して顔を上げた。 久しぶりのコウの姿。 途端、体の中心から熱が沸き起こった。気がした。 嬉しいという感情が身体中を駆け巡る。それこそ足先から脳天まで。 また会えたという事実に僕は喜んでいる。前のように嬉しさを感じられている。 「久しぶり、コウ!」 僕にしては弾んだ声を出してしまった。思わず立ち上がりかけたのを堪えただけ褒めて欲しい。 「久しぶりだね。こんばんは」 「うん。こんばんは」 コウが僕の隣に並んで座る。僕も脚を伸ばして座り直した。 夜空を見上げると、ほんの数日前は消えそうなほど細かった月が、今日は半月に近くなっていた。 「テストどうだった?」 「ちゃんとできたよ」 「ならよかった。夜更かしも?」 「してないよ」 コウに会う時間に起きてしまったのは内緒だ。それにあの時も初日は起き上がったとはいえ、それ以外の日はそのまま寝たから。 うん、嘘はついてない。 「……ねぇ、亜樹って、学校好き?」 心の中で一人頷いた僕にコウが静かな声をかける。

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