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激動3

僕と彼の前に、ジャージ姿の教師が現れる。松田貴之先生。松田先生は僕の担任だ。朝から彼が僕を連れていくのは流石に止めてくれるはず。 「渡来、どうかしたのか?」 「どうも調子が悪いようで」 彼は余所行きの笑顔を浮かべ、僕の肩に手を回す。 そんなの嘘だから。気づいて、先生。 「だから保健室に連れていこうと思います。先生はショートに遅れたら困るので行ってください」 「おお、そうなのか。さすが会長だ。じゃあ頼むな。渡来、お大事に」 しかし願い虚しくあっさり松田先生は彼の言葉を信じてしまう。 それも無理はない。彼は頭も良ければ、運動もできて、器量もよく、生徒や先生からの信頼はかなり厚い。だからこそ生徒会長に選ばれた。 それに今の僕はきっと顔色が悪い。だから調子が悪いと思われてもおかしくない。 出席簿を揺らしながら去る松田先生を見つめた。 僕はとんでもない人を相手にしてしまっているんだ。 改めて感ぜられる。 余所行きの仮面を脱いだ彼は、また僕の腕を掴んで引っ張り始めた。 喉が狭まっていくような感覚。 怖くて、恐ろしくて、でも逆らえない。これから起こることは何だろう。いつもより酷いことって何だろう。 色々と考えているうちに生徒会室が見えてくる。 彼は乱暴にドアを開けると、僕を広いソファへ投げ飛ばした。 柔らかな背もたれに体がうずまる。するとその上に彼がのしかかってくる。

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