「今日はもう帰るといい。先生には伝えておく」 ことが済んだあと彼にそう言われ、生徒会室を出た。 彼の気の済むまで犯された僕。頭の中には自分自身の淫らな声がこびりついている。嫌悪を抱いていたのに、感じてしまった自分が一番穢い。 中に出されなかったとはいえ、まだ彼の感触が残っている気がする。それがとにかく気持ち悪い。 それなのに信じたくない気持ちもあった。 茫然自失で昇降口に向かう。 教室まで行く気力も、授業に割って入って説明する気力も残っていない。手ぶらのまま靴を履き替えた。 そこからはよく覚えていない。気づけば家に辿り着いていた。鍵を開けて中に入る。 狭い玄関。母の食器が残る流し。朝食をとるダイニング。それぞれの自室へ繋がるふたつのドア。 いつも通り変わらない家だ。いつも通り。僕以外は、いつも通り。 「うっ……」 胃の中のものがせり上がってくる。慌ててトイレに駆け込んで吐き出した。 何度もえずいて、吐き出して、胃の中身が空になるまで続けた。 落ち着いた後、今度は自分の身体がとても汚く思え、風呂場に駆け込んだ。制服を脱いで、捨ててしまいたい気持ちを抑えて、洗濯機に放り込む。 浴室に入ってシャワーを頭からかぶった。 清浄な水が全て洗い流してくれたら。 そう願ってずっと浴び続けても、やっぱり穢いものは穢い。 「……きたない」 自分の声が耳に届いた。 その言葉が暗示のように脳に絡みつく。 そう。きたない。ぼくは、きたない。 彼に触れられたところをひたすら擦った。擦っても擦っても綺麗にならない。だからずっと擦り続ける。