53 / 961

崩壊と萌芽1

きっと急用ができたのだろう。 嫌な予感を振り払って、そう思うことにした。 コウが来なかった日。ちゃんと学校に行った。昨日の今日で彼が接触してくることもなく、普通に授業を受けて帰った。自分の身体への嫌悪は、学校にいた方が増したけれど。 ちなみに隣の席は空のままだった。 そしてその日の夜もコウを待った。コウは来なかった。 次の日の夜も待った。来なかった。 その次の日も、来なかった。 その次の日も、その翌日だって、来なかった。 その間に僕の予感は大きくなり、、予感から確信へと変わっていった。 つまり僕は、遊ばれていた。 コウも僕といて楽しんでくれている。会いたいから来てくれている。そう舞い上がっていたけれど、よく考えてみればそんなはずないじゃないか。 だって僕は根暗で、ネガティヴで、口下手で。人付き合いがとことん下手な僕といて楽しいわけがない。 それなのにどうして僕といるのか。答えは一つしか浮かばなかった。 コウみたいに素敵な人は、それこそ付き合っていく人の幅も広いはずだし、選択肢も多いはず。あえて付き合いづらいタイプの人間と仲良くする必要はない。 だがある日、普段のは違ったタイプの人間、僕と出会った。たまにはこういう人間で遊んでみるのもいいだろう。そしてみるみる自分に溺れていく様を楽しもう。そう思ったコウは僕のもとへ通うことにする。 ずっと順調だった計画だが、この前嘘をついていることがバレてしまった。ならばもう会う必要はない。この関係を捨てるだけ。 きっとそんなところだ。コウが本当に間宮颯太ならこの行動はなんらおかしくない。 ああ、醜い。僕はなんて醜いんだろう。 まんまと浮かれて、調子に乗って、突き落とされて。 醜い。滑稽。憐れ。惨め。 隙間だらけの心には、遊ばれたという思いが満ちていく。どうしようもなくて自分を醜いと罵ることでしか、自分自身を守る術が今は見つからない。

ともだちにシェアしよう!