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崩壊と萌芽3
コウが来なくなってからニ回目の土曜日。多分一週間と少し経ったと思う。
また夜中に起きてしまった。
この習慣をどうにかしたい。ただ虚しいだけだ。
無理やりでも寝ようと寝返りを打つ。すると床に落ちているリスが目に入った。
何度も捨てようとして、結局ゴミ箱に入れられなかったもの。
……本当はどこかでわかっているんだ。
遊びでもいいから、また会いたい。
嘘でもいいから、また笑ってほしい。
リスを捨てられないのも、夜中に起きてしまうのも、その表れ。あれからずっと窓の鍵を開けたままなのも、そう。
僕はとても脆くて、弱い。
でも、もう潮時かな。終わりに、しなきゃ。
布団から抜け出すと、少しくらりとした。非回転性だから大丈夫。
そのまま窓の方へ向かう。カーテンに手を伸ばして、鍵を触ろうとすると。
「……っ」
タイミングを計ったように、窓がノックされる。コンコンという軽い音なのに、脳を強く揺さぶられた気がした。
伸ばした手を引っ込める。
「……亜樹、起きてる?」
控えめにかけられた言葉。聞き慣れたコウの声。
久しぶりに聞いたそれに、やはり僕の体は熱くなる。何に対しても動じなかったのが嘘みたいだ。
好き。コウが好き。大好き。
苦しい。気持ちが溢れてくる。それが苦しい。決して消えない気持ち。こんなもの要らない。
気持ちとは裏腹にカーテンへ手が伸びていく。この向こうにコウがいる。そう思っただけで。
手をさらに、近づける。
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