55 / 961

崩壊と萌芽3

コウが来なくなってからニ回目の土曜日。多分一週間と少し経ったと思う。 また夜中に起きてしまった。 この習慣をどうにかしたい。ただ虚しいだけだ。 無理やりでも寝ようと寝返りを打つ。すると床に落ちているリスが目に入った。 何度も捨てようとして、結局ゴミ箱に入れられなかったもの。 ……本当はどこかでわかっているんだ。 遊びでもいいから、また会いたい。 嘘でもいいから、また笑ってほしい。 リスを捨てられないのも、夜中に起きてしまうのも、その表れ。あれからずっと窓の鍵を開けたままなのも、そう。 僕はとても脆くて、弱い。 でも、もう潮時かな。終わりに、しなきゃ。 布団から抜け出すと、少しくらりとした。非回転性だから大丈夫。 そのまま窓の方へ向かう。カーテンに手を伸ばして、鍵を触ろうとすると。 「……っ」 タイミングを計ったように、窓がノックされる。コンコンという軽い音なのに、脳を強く揺さぶられた気がした。 伸ばした手を引っ込める。 「……亜樹、起きてる?」 控えめにかけられた言葉。聞き慣れたコウの声。 久しぶりに聞いたそれに、やはり僕の体は熱くなる。何に対しても動じなかったのが嘘みたいだ。 好き。コウが好き。大好き。 苦しい。気持ちが溢れてくる。それが苦しい。決して消えない気持ち。こんなもの要らない。 気持ちとは裏腹にカーテンへ手が伸びていく。この向こうにコウがいる。そう思っただけで。 手をさらに、近づける。

ともだちにシェアしよう!