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崩壊と萌芽9
最後の声が落ちて、しんっ……と静まる部屋。
開け放したままの窓から風が吹き込んで、カーテンが僕らにぶつかった。外の涼やかな空気が部屋の空気と混ざる。
そのままカーテンが戻って、また静かになっても、颯太は動かない。僕のことを見つめて固まったまま。
ちゃんと伝えたのに、どうしてだろう。まさか聞こえていないことは……ない、と思うけど。
だんだん恥ずかしくなってまた颯太の胸に顔を埋める。その動きで颯太はやっと現実に戻ってきたようだ。
「ね、亜樹。顔上げてよ」
先程までの暗い声が嘘のように穏やかな声だ。でも僕はそれに首をふるふると振って答える。
「お願い。俺、亜樹とキスしたい。だから……ね?」
キス。
その言葉に僕の心が揺れ動く。
両想いになって初めてのキス。
記念になるようなことはつい気にしてしまうタイプの僕。だから当然、キスにも反応してしまう。
おずおずと顔を上げる。
すると颯太がふわりと笑った。久々に見た純粋な笑顔。やっぱり、綺麗だ。
「亜樹もキスしたいんだ」
だけどその後に出た言葉は違う。笑みもからかうようなものに変わる。
「……いじわる」
僕は少し口を尖らせてまた顔を戻した。颯太の胸に強く顔を押しつける。
「ごめん、ごめん。気分上がってるからつい。今度はからかったりしないから」
そう言うけど信じられるわけない。
そうやっていじけて動かずにいる。
「せっかく両想いになれたんだ」
すると真面目な声が降ってきた。
それをきっかけに今までのことが思い出されて、もの淋しいような感慨深いような思いが湧く。颯太も同じなんだろう。
ゆっくりと顔を上げる。
視界に入るのは真摯でも、奥に熱い光の灯った颯太の双眸。
そんな目と見つめ合えば、唇が重なるのは自然なことだった。
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