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崩壊と萌芽10
「んっ……ンッ……」
戯れのような軽いキスを繰り返す。
それだけでも気持ちよくて脳内が混濁していく。想いが通じあってると、こんなに違うものなのか。
初めて颯太とキスしたのは最初の日。だから一ヶ月くらい前のことだ。
あの日のキスが、僕にとって初めてのものだった。体を交えたのも颯太が初めて。今思えば、それでよかったって心底感じる。
「亜樹、集中して」
「んんっ」
颯太が僕の下唇を噛んでくる。目の前にはいじけたような目。
それが可愛くて目を細める。
「んぁっ……んむぅ……」
それにもっといじけたのか颯太は舌を入れ込んでくる。余計なことを考えさせまいといった深いキスで、文字通り息をつく暇もない。
颯太の舌が歯をなぞったり、舌と舌が擦れたり、吸われたり。
一つ一つが気持ちよくて、両想いなんだなぁって幸せになる。
深く深くキスしながら、颯太は部屋の奥へ向かう。僕はといえば夢中でキスに答えていて、気づけば布団に押し倒されていた。
「亜樹……」
「あ、そうっ……まっ……」
するっと服に入ってきた手で今の状況に気づく。慌てて颯太の胸を押し返す。熱に浮かされているから大した力は出ない。
「亜樹? だめ……?」
「だ、だって、今日、さっき……」
「両想いになったばかりだって?」
察しのいい颯太にこくこくと頷く。
今日っていう日を大事にしたいし、両想いってなるとすごく恥ずかしいし……。それに想いが通じあってからの初めては、もっと雰囲気や段取りを大切にっていうか……。少なくともいきなりは、ちょっと。
「そういうの大事にするんだね、亜樹は」
「う、うん」
ニコッと笑っていうから颯太はわかってくれたのだろう。
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