62 / 961

崩壊と萌芽10

「んっ……ンッ……」 戯れのような軽いキスを繰り返す。 それだけでも気持ちよくて脳内が混濁していく。想いが通じあってると、こんなに違うものなのか。 初めて颯太とキスしたのは最初の日。だから一ヶ月くらい前のことだ。 あの日のキスが、僕にとって初めてのものだった。体を交えたのも颯太が初めて。今思えば、それでよかったって心底感じる。 「亜樹、集中して」 「んんっ」 颯太が僕の下唇を噛んでくる。目の前にはいじけたような目。 それが可愛くて目を細める。 「んぁっ……んむぅ……」 それにもっといじけたのか颯太は舌を入れ込んでくる。余計なことを考えさせまいといった深いキスで、文字通り息をつく暇もない。 颯太の舌が歯をなぞったり、舌と舌が擦れたり、吸われたり。 一つ一つが気持ちよくて、両想いなんだなぁって幸せになる。 深く深くキスしながら、颯太は部屋の奥へ向かう。僕はといえば夢中でキスに答えていて、気づけば布団に押し倒されていた。 「亜樹……」 「あ、そうっ……まっ……」 するっと服に入ってきた手で今の状況に気づく。慌てて颯太の胸を押し返す。熱に浮かされているから大した力は出ない。 「亜樹? だめ……?」 「だ、だって、今日、さっき……」 「両想いになったばかりだって?」 察しのいい颯太にこくこくと頷く。 今日っていう日を大事にしたいし、両想いってなるとすごく恥ずかしいし……。それに想いが通じあってからの初めては、もっと雰囲気や段取りを大切にっていうか……。少なくともいきなりは、ちょっと。 「そういうの大事にするんだね、亜樹は」 「う、うん」 ニコッと笑っていうから颯太はわかってくれたのだろう。

ともだちにシェアしよう!