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ここから一歩2
まだ布団から出る気にならなくて、二人で抱き合ったままで過ごす。
たまにキスしてみたり、脚を絡めてみたり、昨日からずっと甘い時間が続いたままだ。本当に幸せで仕方ない。
これがいっときの夢にならなければいいけど。
「……一つだけ聞きたいことあるんだけど、いい?」
一瞬浮かんだ不安を言葉で上塗りする。
「いいよ。何?」
「どうして名前だけじゃなくて、年齢も嘘をついたの……?」
「年齢?」
颯太が来なかった期間、考える時間はたっぷりあって、この疑問はその時に浮かんだものだ。落ち着いた今になってどうしようもなく気になる。
迷ったけど思い切って聞いてみれば、颯太は不思議そうな顔で僕を見つめ返すだけだ。なんだか拍子抜けしてしまう。
「颯太、僕と同じクラスってことは2年のはずなのに、十七歳って言ってたから……。誕生日は十二月って言ってたし」
「あーそっか、そっか。確かにそういうことになっちゃうね」
どういうことだろう。
颯太は僕の言葉を聞いて合点がいったようだ。一人でうんうんと頷いている。
「あのね、実は俺、留年してるの」
「えっ……?」
「高一の頃は真面目に通ってたんだけどねー。ちょっと色々あってやさぐれて、二年の時殆ど学校行かなくて、留年しちゃったんだ」
「そうなんだ……」
色々、の部分が気になったけど、まだそこまでは踏み込めない。まだ、ダメな気がした。颯太に隠し事をしている負い目もあるのだろう。
そもそも颯太が色々という言い方をしたなら、それはまだ聞くなということだろう。
「でも、間宮颯太が、颯太で、よかった」
僕は狡い人間だ。
こうやってまた自分を守ろうとする。嫌なことから目を背けてしまうんだから。
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