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ここから一歩4

「亜樹のおかげなんだよ」 「……えっ、ぼ、僕……?」 「そう」 颯太は僕の髪に手を差し込んで、顔を引き寄せる。コツンと額を合わされ、唇も触れてしまいそうな距離になった。 普通の時にこれをやられると、少し恥ずかしい。 「亜樹はどんなに辛くても学校に行くって言っていたよね」 「……うん。言った、けど……」 「それも理由がお母さんのためで、すごく感動したんだ……。真っ直ぐな思いに心打たれた。だからね、どんな理由があれど、学校行くべきって思った」 言い終えて颯太は照れたように笑う。僕も僕で思わずはにかんでしまう。 僕のおかげだなんて照れてしまう。でも、嬉しい。いつも貰ってばかりの僕が、少しは与えられたと思っていいのだろうか。 「これからは学校でも一緒だよ」 「……席も隣、だね」 「あーもう、亜樹は可愛いなぁ」 颯太との学校生活。想像するだけで楽しくて、嬉しくて、思わず微笑む。 すると颯太は急に僕を抱きしめてくる。 颯太はこういうことが多い気がする。まるで発作のように可愛いと言って抱きしめたり。僕のどこに可愛い要素があるのだろう。 「ひゃっ! だ、だめっ……」 一人で首を捻っていると、颯太の手が腰に回る。それがつつっといやらしく背をなぞるから、身をよじって躱す。 「亜樹のけちー」 「けちとかじゃな……」 身をよじった先のあるものに、視界が囚われる。 颯太の腕や布団から抜け出して、それのもとまで行く。颯太に背を向ける形でその場に座って、それを拾い上げた。

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