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ここから一歩10

「へぇ……恋人か。いいじゃねぇの」 返ってきた返答にホッとする。 颯太の背に隠れるようにしながら、ちらとおじさんを見上げた。 バチッと視線が合う。 彼は颯太みたいに優しい笑みを浮かべながら僕を見ている。 「手なんか繋いでお熱いね」 「おっさんと違って俺らは若いから」 「うるせぇ、お前みたいのはガキっつぅの」 だけど僕に声がかかることはなく、おじさんと颯太の言い合いが始まる。 「亜樹、この人は間宮久志。俺の保護者」 「あ、うん……」 「無視かよ」 そうかと思えば、颯太が振り返って僕に笑いかける。こちらも優しい表情。 間宮久志さん。颯太の保護者。覚えた。 保護者、というのなら、実の両親ではないのかもしれない。もしかしたら颯太は両親と住む場所が違うとか。高校までの距離の影響から叔父さんの家に住んでいる。それはあり得そうだ。 家の大きさからして2LDKくらいだから、一家族が住むには狭いだろうし。 「さ、亜樹、リビング行こう」 「わ、わかった」 「邪魔」 「へぃへぃ」 間宮さんがリビングに戻って、僕らもそれに続く。 リビングの中はいたって普通の内装だ。颯太の雰囲気から勝手に家具のデザインが統一されていそうだと思っていたけれど、特に拘りはなさそう。暮らす部屋だ。 「亜樹、ソファにでも座ってて。飲み物持ってくるから」 「あ、颯太……」 僕が中を見ているうちに颯太の手が離れてしまう。少し寂しくて、それから心細い。 ダイニングテーブルには間宮さんが腰掛けている。目を合わせないようにソファに向かった。 ソファはL字型で五人くらい座れそう。座ってみるとふかふかして心地いい。

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