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初めてのデート2
お昼頃までは街をぶらつこうかって言われ、閑静な住宅街から市街地へ向かって並んで歩いた。
徐々に人通りが増え、ざわめきも耳に入ってくる。殆ど出かけないし、人通りが多い場所は避けがちだから、縁のない通り。
ざわめきや多くの人々に囲まれたら本来は緊張するのだと思う。だけど隣に颯太がいるだけで紛れてしまう。
のんびり街を歩きながら颯太が色々と話してくれた。
あそこの店はいいだとか、あの場所によく行ったとか、あの店には面白い人がいるだとか。
街のことをよく知る颯太の話は退屈しなかった。
「颯太はいろんなこと知っているんだね」
「一日中バイトするようになってから知った。毎日、街に出ていたから」
颯太は少し恥ずかしそうに目線をそらした。
まるで颯太の行動が恥ずべきことのようだ。確かに学校をサボってバイトというのは、褒められた行動ではない。でも僕にはかっこよく思えた。
颯太だから、だろうけれど。
「あ、亜樹。ゲーセン行こ」
目線の先にゲームセンターがあったみたいだ。颯太は指を指す。
真っ赤な看板に白字で店名が書いてある。街の中でもよりキラキラ、いやギラギラしている。
「ゲームセンター……?」
「俺、クレーンゲーム得意なんだ」
颯太が少年のように瞳に煌めきを見せる。
ゲームセンターなんて行ったことがないから、実は怖いイメージを持っている。偏見かもしれないけど、柄の悪い人が集まるような。
だけど颯太の口ぶりからして腕前を披露してくれるのだろう。
それに颯太のことだからさらっとやってのけて、しかもかっこよくて……。
誘惑に負けて僕は颯太について行った。
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