93 / 961

初めてのデート4

「俺を一番可愛がってね」 「あ、なっ……」 目を細め、色っぽく口角を上げる。 妖艶なその表情と言葉を見て、かっと頬が熱くなった。思わず俯くと掌にいるリスと目が合う。 このリスも十分可愛いけど、 「そ、そんなの……当たり前、だもん」 一番は譲れない。 僕の中ではいつだって颯太が一番大事なんだ。 かっこよくて、優しくて、いつも引っ張ってくれる。そんな颯太が大好きで、大好きで。 でも今の僕には騒音に紛れるように呟くので精一杯だ。 颯太に聞こえただろうか。 聞こえても、聞こえていなくても、困る。 そっと視線を上げると喜びが抑えきれないような表情の颯太。かなり小さい声だったのにしっかり聞こえていたようだ。 「ぼ、僕もやってみたい」 外での甘い空気に耐えられなくてクレーンゲームに向き合った。 財布を取り出してお金を入れる。小銭の音が耳を抜ける。 とりあえず始められる状態まできたけれど、どのリスにするかなかなか決められなくて、最初の一歩が踏み出せない。 「どれがいいの?」 「えっと……」 視線を泳がせると一匹と目が合う。 奥の方で少し盛り上がった場所にいる青いリス。 そうだ、これを颯太のお返しにすればいい。 パッとひらめくと名案に思えた。そしてそのリスを指差す。 「……あの青い子がいい」 「奥の盛り上がっているとこの?」 「うん」 「了解」 颯太が体を寄せて、僕の高さに合わせてかがんだ。

ともだちにシェアしよう!