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初めてのデート4
「俺を一番可愛がってね」
「あ、なっ……」
目を細め、色っぽく口角を上げる。
妖艶なその表情と言葉を見て、かっと頬が熱くなった。思わず俯くと掌にいるリスと目が合う。
このリスも十分可愛いけど、
「そ、そんなの……当たり前、だもん」
一番は譲れない。
僕の中ではいつだって颯太が一番大事なんだ。
かっこよくて、優しくて、いつも引っ張ってくれる。そんな颯太が大好きで、大好きで。
でも今の僕には騒音に紛れるように呟くので精一杯だ。
颯太に聞こえただろうか。
聞こえても、聞こえていなくても、困る。
そっと視線を上げると喜びが抑えきれないような表情の颯太。かなり小さい声だったのにしっかり聞こえていたようだ。
「ぼ、僕もやってみたい」
外での甘い空気に耐えられなくてクレーンゲームに向き合った。
財布を取り出してお金を入れる。小銭の音が耳を抜ける。
とりあえず始められる状態まできたけれど、どのリスにするかなかなか決められなくて、最初の一歩が踏み出せない。
「どれがいいの?」
「えっと……」
視線を泳がせると一匹と目が合う。
奥の方で少し盛り上がった場所にいる青いリス。
そうだ、これを颯太のお返しにすればいい。
パッとひらめくと名案に思えた。そしてそのリスを指差す。
「……あの青い子がいい」
「奥の盛り上がっているとこの?」
「うん」
「了解」
颯太が体を寄せて、僕の高さに合わせてかがんだ。
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