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初めてのデート11
首を目一杯、上に向けてキリンを見る。のんびり草を食べている様子が可愛い。
「キリンだね。すごく大きい」
「そうだね〜。キリン見るといつも首重くて大変そうだなって思う」
「確かに……!」
くだらない会話をしながら園内をゆっくり回った。ライオンやトラ、パンダなど、いつもテレビで見ていた動物が目の前にいて、すごく楽しい。
メインコースはあらかた見て回り、今度は爬虫類館にでも行こうとしていた時だ。あるコーナーが目にとまる。
「亜樹?」
「あ、ごめん」
そこは触れ合いコーナー。リスに触ることができるらしい。
つい立ち止まったら颯太に声をかけられた。慌てて追いつくと今度は颯太がそのコーナーを見る。
「入りたい?」
「あっ……ううん、いい」
入りたいし、触りたい気持ちは多分にある。
でもその中にいるのは子供やカップルばかりだ。そこへ男二人で入って行く勇気は持ち合わせていない。それに浮いてしまいでもしたら、颯太に迷惑をかけてしまう。
「俺が行きたいから行こ」
「わっ……」
颯太が僕の手を掴む。周りに人がいるのに。
そう思うと周りのざわめきが僕らに向かっているような気がした。
「颯太……!」
焦りを口に出しても颯太は振り返らない。何度声をかけてもそう。
そのまま触れ合いコーナーまで行ってしまった。入り口前で颯太は手を離す。
「颯太、なんで……」
「謝らないよ」
少し強い語気に穏やかな笑み。そして先にコーナーに入っていく。
鼻の奥がツンとした。
一目なんか気にしなくていい。堂々とすればいいよ。
そんな想いが伝わってきて、感動と申し訳なさが押し寄せてくる。
そうして立ち尽くす僕を見て颯太が手招きをした。僕はそれに笑みを返してリスの中に歩み入る。
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