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初めてのデート13
触れ合いコーナーを出たあとは、予定通り爬虫類館に行き、鳥類館にも行った。他にも見ていないところは行き、閉園時間ギリギリまでいた。
そして動物園を出る頃には空が橙色に染まっていて、いい時間だからと夕食を取った。またもや静かめのレストランでのんびりと。
そして二人で帰路を辿っている今に至る。
いつの間にか空には星が瞬いていた。
ゆっくり、ゆっくり、夏が近づいていて、夜でも寒くない。たまに吹く風が心地いい。夜の澄んだ空気も気持ちいい。
そっと隣の颯太に視線を移す。穏やかな表情をしている。そこから瞳は颯太の手に向いた。
「手、繋ぎたいな……」
「いいよ」
小さく呟くとすぐさま返事が返ってきて、きゅっと握られる。自然と恋人繋ぎになった。
「明日は槍が降るかも」
「どうして?」
「だって今日は亜樹がやけにデレるから」
「何それ」
思わず笑ってしまう。
確かに今日はいつもより自分の気持ちを言った気がする。特に理由はないけれど。
強いて言うならデートだからだろうか。いつもより楽しくて嬉しくて、颯太の気持ちに応えたいと思ったのかも。
顔を上げると星に並ぶ満月が見えた。
「でも今は。今は、夜だからだよ」
「ならずっと夜がいいな」
「あはは」
夜は僕らにとって特別な時間。
少なくとも僕にとっては少し温かくてちょっぴり神聖で大切な時。
こんな素敵な時間帯くらい素直に言葉を言ってもいい気がした。
満月が淑やかに光を注いで、星が空を飾る。
「ねぇ、颯太」
「なに?」
「夜中じゃないけど、夜だよ」
「そうだね」
今がずっと続けばいいのに。
なんて初めての思いを抱いた日だった。
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