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恋の閑話1
ある日のこと、僕は衝撃の一節を見つけてしまった。
『初恋は実らない』というフレーズだ。
僕はショックを通り越して、しばらく固まってしまった。
だって僕は颯太が初恋だ。
両想いでお付き合いしているという今の状態を実ったと言えば、この言葉は覆される。だけどもし付き合ってもすぐに別れるということも含めて、実らないだとしたら。
いや、そもそもこういった言葉は迷信だ。そんなの人それぞれだし、初恋を実らせてゴールインしたカップルだっている。たまたま悪い方にばかり目がいって広まってしまっただけ。
だから気にする必要はない。うん、大丈夫。
……だけど、そういうこと関係なしに今の僕はどうだろう。
颯太が僕を好いてくれているのはよくわかる。ちゃんと伝わってくるけど、それがいつまで続く?
だって僕はまだ根暗で臆病で引っ込み思案で喋るの下手で……と言いだしたらきりがない。
颯太の歴代の彼女に比べたら劣るに決まっている。
そもそも男で体が柔らかくない。そ、そういうことをするときに、男同士は面倒だって調べたら見かけたし、可愛くもない。
そんな僕を好きになるのは、普通あり得ないことだ。今は熱くなっているだけでそのうち目が覚めてしまうかもしれない。
ああ、どうしよう。不安になってきた。今日はせっかく颯太が来る日なのに。
両想いになってから、夜会うのは土日だけにした。だがたまに平日に会うこともある。
そして今日はたまたまその日で。
こんな状態で会ったら迷惑をかけてしまうのに、僕の手は断りの連絡を入れることをためらう。
結局、不安な気持ちのまま部屋の隅でうずくまった。
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