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不穏の気1
窓がコンコンッとノックされる。ちょうど学校の用意を終えた僕は制服姿で窓を開けた。
「颯太、おはよう」
「おはよう」
朝日の中の颯太は眩しい。もう何回か見たはずなのに、まだまだ見慣れない制服姿。
本当に、かっこいい。
颯太は意識改め、学校へ行くことにした。だから僕らは毎日一緒に登校している。わざわざ窓を選んでいるのは、チャイムの音で母さんが起きてしまうからだ。
「準備終わった?」
「うん。玄関の方行ってて」
「わかった」
颯太が玄関の方へ向かう。
僕は窓の鍵を閉めて、玄関へ行った。鍵を閉め終わったところで、颯太の姿が現れる。
「行こっか」
「うん」
閑静な住宅街を二人で歩いていく。
出会ったばかりの頃は、まさかこんなことになるとは思ってもみなかった。そもそも高校生だと思っていなかったし。
幸せ、だなぁ。
こうやって平穏な日々を過ごしていると、しみじみそう感じる。
ずっとこんな日々が続いてくれるといい。
きっと、そうなってくれる。
「まだ早起き慣れないな」
「僕らが会うの夜中だったもんね」
颯太が大きなあくびをする。
手を口元に当てているとはいえ、横からだから大きく開けた口がよく見える。幼くて可愛い。
「そう考えると朝一緒に歩いているのって不思議な気がする。亜樹は夜も朝も可愛いね」
「なっ……!」
少し幼さが窺えたと思ったらすぐにそういうことを言う。
僕は可愛くないのに。いや、そうじゃなくて、そもそも朝から、しかも道端で、そういうことを言うのがいけない。
同じ高校の生徒がちらほら見え始めている。もし今のを聞かれていたらと考えれば、穴に入りたくなる。
あわあわしている僕を見て、笑んだ颯太は僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
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