114 / 961
不穏の気3
「渡来さ、間宮颯太と仲良いの?」
「あ……えっと……」
クラス中の視線が刺さる。しかもそれが厳しいものだから、萎縮してうまく言葉が出てきてくれない。
「毎日、一緒に登校するってことは仲良いんだよな?」
「う……うん……」
「ならあいつに学校来るなって言えよ」
「……え?」
耳に入った言葉が信じられなくて、思わず清水くんを見つめる。
颯太の噂が嘘だと気づいていないのだろうか。
「迷惑なんだよ。あいつが来ることでクラスのみんなが怯えちゃってるの」
「あ……で、も、噂……は嘘、で……」
こういう空気だと、どうしても声が震えてしまう。
情けない。颯太のためにきちんと話さなければいけないのに、こんな時でも僕は。
僕のじれったい言葉に清水くんは、ますます瞳に苛立ちの色を募らせる。
「噂が嘘だろうと本当だろうと、広まってるのは事実だ。だからいつ本性を現すのかってみんな授業に集中できていない。クラスに支障をきたしてるんだよ」
「……っ」
「だから言って。噂を覆すことなんて不可能だからな」
「……ぁ」
言うだけ言って清水くんは立ち去る。清水くんが席に戻るとクラスの声が再開された。
ホッと息をつく。
とりあえず怖い空気から解放された。だけど問題は何も解決していない。
颯太は悪い人ではない。実際、学校に行き始めてから問題ごとは何も起こしていないし。
でも清水くんの意見も、否定できないんだ。
今の話を聞くと登校時に集まる視線は、嫌な思いをさせて自然と来なくさせようとするものだったのかもしれない。
そういうことをしてまで、みんなは颯太に来てほしくなくて。
でも颯太だって色々乗り越えて、やっと学校に来れたはずで、だからこそ僕には来るなとは言えない。
どうすればいいかわからず、唇を噛む。
ともだちにシェアしよう!