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素直な気持ちを1

呆然として颯太を見る。息を切らした大好きな人がそこに立っている。 颯太は険しい表情で僕と彼に近づいた。そして彼を押しのけて僕を抱き起こした。その温かさが、これは現実なのだと教えてくれる。 「亜樹に触るな」 「……間宮、颯太」 颯太が彼を睨むと、彼も睨み返す。 「家での苛立ちをぶつけるようじゃ想いなんて伝わらない。そんな奴が亜樹に近づくな」 「貴様、誰に向かって……」 「ええ、わかっています。九条生徒会長。あなたのような聡明な人なら、俺の言いたいことも、全て、わかりますよね?」 彼が怒りで顔を歪ませる。普段は生々しい感情を全く見せない人だから、少し驚いた。 二人のやりとりは僕にはいまいち理解できない。だが颯太が僕を想ってくれているということはちゃんと伝わってきた。 彼が口を開ける。何か言うと思ったら、舌打ちをする。 「二度と話しかけるな」 それは僕に言ったのか、颯太に言ったのか。わからないけれど、もう彼は手を出してこないような気がした。 去っていく彼を二人して見送る。 「……亜樹、震えてる」 「そう、た……」 彼が見えなくなってから、颯太は僕の手を握って言った。確かに僕の手はカタカタと震えていた。安堵のためか、さらなる恐怖のためかはわからない。 「亜樹の抵抗する声が聞こえた気がしてすごく焦った。よかったよ、見つけられて」 「颯太……そう……た……」 「亜樹のめまいの原因はこれだったんだね」 僕の瞳からあっという間に涙が落ちる。 颯太の優しい声に、柔らかな手つき。また髪をすいてもらえたことが、とにかく幸せでたまらない。前のような関係に戻れるなど、思えなかったから。 「……で、どこまでされたの?」 「えっ……と、キスマークに爪を立てられて、舐められた、だけ……」 「じゃなくて、今まで」 「……っ」 どうせもうバレているのだから、観念すればいい。だけど自分の口から、あんなことを告げるのが、どうしても躊躇われて。 「亜樹、言って。怒ってないと言えば嘘になるから」 ふるっと震えたまま動かない唇。 だが颯太の少し厳しい口調に、焦った声が飛び出した。 「……い、いつもは、あの人を……イカせたり……僕が、自慰を見せたり……して……」 「うん」 「で、でも、一回だけ……その…………繋がった、ことが……ある……」 「……そう」 「ごめ……ごめんなさ……そうた、ごめんなさい……」 ああ、どうしよう。軽蔑される。 大粒の涙が溢れる。怖くて颯太の顔が見られない。

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