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素直な気持ちを5
颯太は僕のいる輪にすんなりと入ってきた。
僕一人でこの問題を解決できないのは、正直悔しいし、ショックだ。でも颯太が近くにいることがとても安心する。必ず助けに来てくれる颯太を、改めて好きだなって感じた。
こんな時に何考えているのだろう。
ぷるぷる小さく首を振って颯太を見る。
真剣な目をしていた。
「さっきは酷い言葉をぶつけてごめん。あとは亜樹が言ってくれたから俺は頭を下げるだけ。お願いします」
同時に颯太は穏やかな、何かを悟っているような表情をしていて、そのまま頭を下げた。僕もそれに倣う。
再び沈黙が教室を包んだ。
主導しているのは清水くんだから、彼が動かぬ限りこれは続く。膝に添えた手をぐっと握った。死刑判決を待つ囚人のような気分だ。
「顔……上げろよ」
照れとかそういった感情を抑えたような声。
つい笑顔になりかけ、急いで止めたなんとも言えない顔をパッと上げた。
「ごめん。踏ん切りがつかなくてつい責める言葉言っちゃって……。本当はなんとなくわかってたんだ。間宮が悪いやつじゃないって」
伏し目がちに清水くんは話す。
清水くんは常にクラスのことを思って行動していた。だからこそつい熱くなりすぎて、どこでやめていいかわからなかったのだろう。
「渡来と話している様子はすごく穏やかだったし……。それに今、普段は全然喋らない渡来があんな一生懸命に話してて、確信が持てたっていうか……」
清水くんは頬に手を持っていき、ぽりぽりと掻く。
「よく考えてみれば、さっきの間宮だって変だよな。噂どおりなら俺たちに手を出さないわけがないのに」
そわそわと彷徨っていた視線がちらりと僕らの方を向く。それから清水くんはへにゃりと笑った。
その様子を見て、僕の顔に笑みが溢れる。颯太を見ると柔らかく微笑んでいて、さらに笑みが広がった。
「まあだから間宮、これから……よろしくな。みんなも、それでいいよな?」
清水くんがみんなを見回すと、「おう」とか「いいよ」って声が上がったり、頷きが返ってきたりする。
その様子に僕の気分はますます上がっていく。
よかった。僕の努力は無駄じゃなかったんだ。
それに何より颯太を認めてもらえて、学校で一緒に過ごせることが、嬉しい。
「ありがとう……ありがとう、清水くん」
「お、おう……」
あまりに嬉しくて清水くんの手を両手で握る。すると彼はなぜか頬を染めて目を逸らした。
「俺からもありがとう」
「……おう」
僕が不思議に思っていると、颯太が僕の手から清水くんの手を奪う。そして軽く握った。それに対して清水くんはじとっと颯太を見て、小さく返事をした。
そしたらクラスのみんながクスクス笑い始める。それを清水くんが睨む。
僕にはよくわからなかったけど、和やかな雰囲気で嬉しくなった。
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