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素直な気持ちを7
僕の家へつくと、颯太は手を引いて僕の部屋へまっすぐ向かう。
あ、きっとこれはすぐ始めるつもりなんだ。
「颯太……夕飯は?」
「亜樹」
「えっ……?」
「亜樹を食べるからいらない」
「あ、なっ……」
ボボッと頬が赤くなった気がする。
僕を食べ、食べる……なんて。そんな言い方、恥ずかしすぎる。
フリーズした僕をあっさり颯太は部屋に連れ込んだ。ちゃんとドアを閉めると、敷きっぱなしの布団へと導く。
まず僕のネクタイを外して、自分の少し緩めに結んだネクタイも外す。
これから、お仕置きされる。お仕置きってやっぱりそういう意味のやつみたい。どういうことされるんだろう。
「あ……の、お風呂は……? 帰ってきたばかりだし……」
「どうせ汚れるんだから今はいいよね?」
妖艶に口角をあげた颯太は、優しく僕を押し倒す。
ああ、どうしよう。もう逃れられない。
頬が熱くなって、心臓が早鐘を打ち始めて。お仕置きなんて怖い。怖いはずなのに、颯太だから、どこか期待してしまう自分がいて。
淫乱な気がして恥ずかしい。
「軽くって約束だし、今日は出しちゃダメってだけにしようか」
「えっ……」
出せない……? それが軽く?
それなら本当はもっと酷いお仕置きがあるということだ。想像しただけで恐ろしい。
いやいや、想像している暇はない。今の提案でも十分辛いじゃないか。
「さて、と」
「ま、待って、待って颯太」
「ん? どうしたの」
「や、やだ……お願い、出させて……」
颯太のシャツをきゅっと掴んで綺麗な双眸を見つめる。恥ずかしさや怖さで目は潤む。
颯太に対してそこまで遠慮する必要はないと今回の騒動で知ることができたから、少しは素直に気持ちを言ってみた。
「あー……その手には、乗らないつもり、なんだけど……」
「手……?」
颯太が顔に手を当てて唸る。指の隙間から僕を見て、指を閉じ、また僕を見て、閉じる。
なに、してるんだろ。
「仕方ないな……。じゃあ出してもいいよ」
「ほんとっ……?」
「その代わり触るのはなしね。そうじゃないとお仕置きの意味なくなっちゃう」
「……うん」
これ以上粘るのは、流石にだめだ。
あんなことをされていたのに、颯太は穢くないと許してくれた。怒ったって、別れたって当然なのに、またこうやって僕を愛してくれようとする。
そんな幸せなことってない。
同意の意を込めてぎゅっと颯太に抱きついた。
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