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片影4

結局颯太の音沙汰はなく、居場所の手がかりもなく、一日が過ぎた。今朝もやはり迎えはこなくて、今日も今日とて隣の席は空。 隣の席に目をやる。 颯太は持ち物の少ない人で、左右にかけているものはなかった。休みの間に溜まったプリントが机から覗かなければ、使っている人がいないと勘違いしそうだ。 溜め息が一回、漏れた。 「渡来」 「……清水くん」 顔を上げると清水くんがいた。颯太がいない間は一緒にお昼を食べていなくて、というより僕が空の机に耐えられず、昼は教室を出ていたから、顔を合わせるのは久しぶりな気がした。 「間宮、最近来ないな」 「なんか家にも帰ってないみたいで……」 「えっ! それって大丈夫なのか?」 「わかんない……。思いつくところ探してみたんだけど、見つからなかった……」 僕が机の上できゅっと拳を作ると、清水くんは何かに耐えるように口を引き締めた。だけどすぐにそれを開く。 「捜索願いとか、出してみたら?」 「そっか……! 颯太の家の人に頼んでみる!」 思わず立ち上がりそうになった。それをこらえて目の前の清水くんを見つめた。 捜索願いはすっかり頭から抜け落ちていた。久志さんも心配していると言っていたし、頼めば了承してくれるだろう。 警察という存在に僕の気持ちは少し明らむ。公の存在は信頼感がある。 「俺も学校内で聞いて回ってみるよ」 「ほんと?」 「おう。だからあんま気落ちすんなよ」 「……ありがとう。清水くんって優しいね」 傷を負った心にはとてもありがたい言葉だ。 清水くんに笑いかけると、一瞬照れと嬉しさが同居した表情をしかけたのに、すぐ沈んだ顔になった。 「……そんなんじゃ、ないって」 聞こえた声は清水くんとは思えないほど暗い。切なさや辛さの見え隠れする表情をしていて、何か悪いことを言ったかと心配になる。 だけどその顔はすぐに笑顔に変わった。クラスのリーダー、校内でも顔の広い清水蓮のいつもの顔。 「俺よか優しいのは渡来だって。こんな一生懸命でさ。俺、渡来がこんな積極的だと思わなかったよ。初めて話した時も臆病だとしか感じなかったし」 「それは……やっぱり颯太のおかげなんだ。颯太のために変わった……ううん、颯太のおかげで変われた、のかな」 「大事な恋人だもんな」 「うん……って、えっ?」 つい大きめの声を出してしまって、クラスの幾人かが振り返る。恥ずかしくて俯いた。そしてちらりと清水くんを上目で見上げる。 「な、なんで……」 「渡来見てればわかるよ。表情とか仕草とか、間宮に対する時だけ変わる」 「そ、そうなの……?」 「恋する乙女って感じ?」 「おとっ……からかわないで」 「ごめんって」 清水くんは笑って僕と会話をしている。その表情に嫌悪はなくて安心した。 でも、なんだか痛々しい。笑っているのに、泣いているみたいな。 僕にはその理由がわからない。そもそもこんな清水くんは初めてだ。 「男同士に偏見ないから安心しろよ」 「うん……」 「……じゃあ、またな。何かわかったらすぐ言うから」 「あっうん。ありがとう」 聞いてみようか。でも聞いてはいけない気がする。だから口をつぐむ。こう悩んでいるうちに清水くんは僕の席を離れた。

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