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見守るというカタチ2
○ ● ○
「これで、よかったんだよな……」
渡来の家の玄関に寄りかかって、呟いてみる。
胸に手を当てた。
俺は、渡来を守れた。
俺じゃだめかなんて馬鹿なことを言いかけて、危うく渡来の負担を増やすとこだったけど。
まあとにかく守れたわけだ。
「はぁー……痛いなぁ」
だけど予想以上に苦しい。
渡来が好きで、守りたくて。その通りにしたはずなのに、胸が苦しい。
渡来を無理やり抱きしめて、俺に身を委ねた時は、多少なりとも幸福を感じた。でも結局のところ渡来の中には間宮しかいなくて。
颯太、颯太なんて呼ぶからどさくさに紛れて亜樹と呼んでみた。そしたら渡来はより安心しちまった。
それもこれもわかっていたこと。最初から報われないのは決まっていたんだ。
その上で尽くすと決めたはず。
「くっそ……」
目の前が霞む。上を向いて、潤いを引っ込める。
男のくせにみっともないとかいったジェンダー差別のような思いを抱いているわけではない。ただここで堪えなかったら、まるで俺の想いが間違いみたいだから。
「帰らないと」
最後に思い切り目に力を入れて、それから開けた。涙はすっかり乾いている。
渡来の家を知れたし、抱きしめたし、名前も呼べた。少し頼ってもらえた。
それだけで幸福だと思おう。
それにもし、万が一にも、間宮が渡来を裏切るなら、俺が容赦なく渡来を奪ってやる。ゼロに等しいけど、俺にだってチャンスはあるさ。
明るさが日に日に増してくる太陽を睨み付け、大きく一歩を踏み出した。
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