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自由に向かって14

○ ● ○ 「亜樹、ホテル行こっか」 ある日の夜、颯太が言った。 あれから僕らは九州を転々としていた。行き先はないけど、一か所に留まるわけにもいかない。寝る場所は決まって夜行バスか漫画喫茶だった。 そうやって過ごすうちに、いつのまにやら八月になっていた。逃げ出してからちょうど一週間だ。 「ホテル……?」 なぜ突然、と首を傾げる。 顔を覚えられても困るし、未成年二人は怪しいからとずっとホテルは避けていた。 「たまにはちゃんと寝たいしさ。行こう」 「えっ、あっ……」 有無を言わせず颯太は僕を引っぱる。 どんどん進んで、どんどんひと気のない方向へ行って。こんなところにあるのかっていう辺鄙な場所に、それは、あった。 「……ラブ、ホテ、ル……?」 「正解。人に会わずに済むから」 目の前には僕でもわかるくらい、いかにもな雰囲気の建物があった。 こんなところ、入ったことない。多分颯太もないとは思うけど……。 颯太は迷わず入っていくから、僕もついていった。中に本当に人はいなかった。パネルがずらっと並んでいる前で、颯太が適当に部屋を選んで、僕らはその部屋に入った。 中に入るとますますそういうことのための部屋って感じだ。薄暗い照明ってところからそう。恥ずかしくて、顔を上げられない。 「俺、先に風呂入ってくるね」 「あっ……わかった……」 颯太は照れる様子をおくびにも出さず、さっさと風呂場へ行ってしまう。 ……それもそうか。ここへはあくまで休息のために来たのだから。何も変に思う必要はない。緊張だってしなくていい。うん。 部屋の奥へ行くと真ん中にベットが一つ。座れる場所といえばそこぐらいしかなくて、仕方なく腰かけた。 ギシッという音がいやらしい気がして心臓の鼓動が早まった。 意識しまいとしても、それは無理な話だ。ドキドキしたまま僕は大人しく颯太を待つ。 しばらくしてドアの開く音が聞こえた。 「あーすっきりした。やっと服変えられたし」 出てきた颯太はバスローブ姿だった。思わず俯く。 何日もお風呂に入れてないし、服だって着替えていない。だからこそのバスローブ。わかっている。わかっているけど…………

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