183 / 961

自由に向かって15

「亜樹も入ってきなよ」 「う、うん!」 颯太がベットに腰掛けるのと入れ替わりに立ち上がる。ばね仕掛けのように勢いがついてしまった。 どうしよう。ドキドキしてるのがバレてしまう。 恥ずかしすぎて僕はお風呂に駆け込んだ。脱衣所にはもう一つのバスローブが置いてある。 僕もこれ……着るんだよね…… 正直着替えたい気持ちはあった。だから出たら着るぞ、と腹をくくる。 浴室に入る。中はやけに広くて、明るい。どうぞ愛し合ってくださいと言っている感じ。 あまり周りを見ないようにして頭や体を洗った。こんな場所だけど久しぶりのお風呂は気持ちよかった。 時間をかけて風呂に入り、僕もちゃんとバスローブを着る。ちょっと緊張しながら部屋を出た。 颯太はカーテンを開け放った窓を背にベッドに座っていた。月明かりが煌々と颯太を照らしている。 「おかえり、亜樹」 「ただいま」 僕はまたギシッと音を鳴らして隣に座る。 そのまま僕たちは話すでもなく、寝るでもなく、座ったままでいた。 心臓はトクトクと早まっていく。 隣の颯太は風呂上がりのせいかどこか色っぽくて。そうでなくても最近ずっと触れ合っていないから、シたいなぁって思ってしまう。 こんな時に、何を考えているのだろう。颯太にその気はないのに……。 「亜樹」 「……ん?」 急に呼ばれて心臓が跳ねる。颯太は僕を見つめて、笑っていた。 「言いたいことがあるなら、言ってごらん」 ずくんっと体が疼く。 目の前の颯太の瞳は強い炎を宿していた。僕を愛したい、体をまじわしたい、そう言っている。 どうやら我慢していたのは、僕だけじゃないみたい。でも颯太は、僕に言わせようとする。 ……ずるい。そうやって僕にばかり、恥ずかしい思いをさせる。 でも、それ以上に僕は。 「…………颯太、シたい……」 蚊の鳴くような声で、言った。

ともだちにシェアしよう!