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一緒の未来4

しんっ……とその場が静まる。 黒服も、颯太も、止まる。 颯太のお父さんはギロリと僕を睨んだ。初めて僕を見た。正直言ってかなりの迫力だし、怖いけれど、萎縮などしていられない。 「……もうやめてください。颯太に自由を与えてください」 「……渡来亜樹。いい度胸だな」 「どうして認めてくれないんですか。九条に縛り付けることがそんなに大事ですか」 「幼い頃からの教育が九条をよりよい高みへ導くのだ」 「……違う」 なんだか最近、人の言葉を否定してばかりな気がする、なんて頭の片隅で考えた。 颯太のお父さんは訝しげに眉をひそめた。 「あなたは久志さんへの……お兄さんへの恨みや羨みを、颯太にぶつけているだけです!」 はぁっと息を吐き出す。 僕の叫びに彼は口角の片側を上げて嘲笑う。 自分は人の上に立つ者だと、人を見下すことをやめない。そんな余裕は崩れていない。 いや、崩すまいと、しているようにも見える。 「両親の目が自分へ向いたことは嬉しかったと思います。だけど結局は跡取りの自分しか見ていなかった」 「何を言っている」 「厳しい教育に日々の重圧。そんな状況に陥れたお兄さんを、恨む気持ちは多少なりともあったんじゃないですか」 「ふざけたことを」 「だけど同時に、自由に生きるその姿が羨ましかった。でもそれを認めてしまえば、九条のために生きてきた自分を否定しなければならない。だから、蓋をした」 「…………」 言葉を遮るように返答したかと思えば、押し黙る。 僕を睨む瞳は厳格で冷たく、トップの様相を崩さない。でもどこか揺らいでいる。 僕はそれを信じたかった。九条俊憲の中に、颯太の父がいることを、信じたい。 「だから颯太が逃げ出した時、お兄さんと重なったと思います。これでは、お兄さんが正しいと証明されてしまう」 「……そのようなこと、」 「違う。正しいのは自分だ。そう主張するために、颯太を連れ戻すことに固執したんじゃないんですか」 「そのようなことはない」 僕とお父さんは睨み合う。

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