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一緒の未来11

僕が話し終えると、母さんは今度額に手を当てた。目を大きく開いて、机の一点を凝視している。 無理もない。これだけの情報は時間をかけないと整理できないはず。 颯太は整理に十分な時間を取ってから母さんを呼ぶ。 「亜樹のお母さん」 「はい……」 「俺のせいで大事な息子さんを危険な目に合わせて、すみませんでした」 そう言って颯太が頭を下げる。母さんは颯太に視線を注ぐ。 「これからも俺のせいで危ない目にあうかもしれません。でも俺は、亜樹のいない人生はもう考えられません」 颯太の目はきっとお父さんに語りかけた時のように、真剣な色を宿しているのだろう。真摯な声音はそれを物語る。 僕は隣を見ることを堪えて、母さんの方を見続けた。 「だから必ず亜樹を守り抜いてみせます……いや、亜樹と支え合って、生きていきます。だから俺と亜樹の関係を、認めていただけませんか」 颯太が言い切ると、母さんはまた目を伏せて考え込む。 だから表情を窺うことはできなくて、母さんが何を思っているのか何の予想もつかなかった。 もし認めてもらえなかったら。僕は母さんと仲違いすることになるのだろうか。それとも、縁を切るとか、そういうことになるのだろうか。 流石に後者はないだろうけど、最悪の場合になった時、どうすればいいのか案は全く思い浮かばない。 とにかく今の僕はただ待つことしかできない。 「亜樹」 「はい」 母さんが急に顔を上げる。その顔に当然笑顔はない。 長年の苦労が刻まれた母さんの顔。 僕のための苦労。 「亜樹は颯太くんとのこと、どう思っているの」 真剣な声音に僕の喉が鳴る。 でも言うことは何も変わらない。 「……僕も颯太と同じ気持ちだよ。颯太は僕をたくさん助けてくれて、変わるきっかけをくれた。そんな大事な人とずっと一緒にいたい。そのためにはどんな困難も乗り越えてみせる」 「そう」 母さんは一回瞼を下げ、颯太に視線を移す。そのすぐ後にまた僕を見た。 そして柔らかく微笑む。 「なら、何も言うことはないわ」 「母さん……」 「亜樹には思うままに生きて欲しいって思ってた。亜樹も颯太くんも互いを想い合っていて、一緒に生きようとしてる。だったら口出しなんて必要ないわよね」 「……ありがとう、母さん」 瞳の端が熱くなる。 理解のある母でよかった。こんなに子供を思ってくれる母で、誇らしくて仕方ない。 自分が親不孝だと考えたことが、失礼に値するかもしれないくらいだ。 唇を噛んで涙を抑える。 「颯太くん、控えめな子だけどよろしくね」 「はい」 母さんは颯太に告げて立ち上がる。ゆっくりしていってと言うと自室に引っ込み、スーツに着替えてからそのまま仕事へ向かった。

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