200 / 961
一緒の未来13
母さんに挨拶に行った三日後、つまり八月七日、土曜日。僕と颯太は今度、教室の前に並んで立っていた。
七月の模試がずれ込んで八月になったのだ。なんともタイミングがいい。
僕が教室のドアを開けて、二人続けて入る。
数人が振り返って僕らに気づくと、ざわって声が上がる。それにつられて他の人も僕らを見て、声を上げた。
久しぶりだな、とか間宮だ、なんて声が聞こえる。
すると教室の真ん中でガタンッて椅子の倒れる音がした。そこを見ると、清水くんが目を見開いて僕らを見ている。
「渡来……! 間宮……!」
机や椅子にぶつかりながら転げるようにして僕と颯太に駆け寄る清水くん。そして思い切り抱きついてきた。
右腕が颯太に、左腕が僕に回り、僕と颯太の肩の間に清水くんの頭。
回りからはひゅ〜なんて冷やかす声が聞こえるけれど、清水くんには聞こえていないみたいだ。
「よかった……よかったな! やっと、元通りになれたんだな……!」
その声は涙に揺れている。
まるで自分のことのように、心配してくれていた。あまりに優しい清水くんにこっちまで涙を漏らしそうだ。
「本当によかった……俺、もう会えないかと思っていたから……」
ポツリと清水くんの声。
「逃げたんだろうなって予想はついたからさ……でもお前らが幸せになれるならって……」
懸命に涙を我慢しようとしているみたいだけど、腕は震えているし、肩のあたりに温かさを感じる。
「だけどやっぱり淋しいじゃんか……理解と納得は別だって……すぐ割り切れるわけ……」
そうして小さく喋り続ける清水くん。
しばらく抱きつかれたままその声を聞いていた。
そして彼の気が済むと、涙を拭きながら僕らの体を解放する。
「亜樹から聞いたよ。清水くん、俺がいない間も亜樹を支えてくれてたんだって?」
「あの時の渡来はほんっとに痛々しかったんだぜ。間宮が傷つけたせいで心ここに在らずって感じ!」
「それについては何も言えないな……」
颯太がそう切り出すと、ここぞとばかりに清水くんが颯太を責める。あの時のことは颯太も負い目に感じているのか、苦笑いしか返せていなかった。
清水くんは僕が憔悴していた時のことを話していく。家に行ったら渡来の様子が〜とか無理やり抱き寄せて〜とか泣きじゃくって〜とか。隠しもせず話されるのは少し恥ずかしかった。
ともだちにシェアしよう!