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Starved heart 2

目の前には見慣れない光景が広がる。ちらほら人が行き交う街中。 勉強だの学校だの、そういうことばかりに目を向けていた僕には、街へ出ることなど殆どなかった。 せいぜい何か入り用の物を買うために出歩く程度。 とにかく外の空気が吸えれば、家の空気を吸う必要がなければ、いい。 そうして当て所なく彷徨っていたら、いつの間にか当たりは暗くなっていた。 そうは言っても最近は夜中に裏口から家に入るということもしばしばだ。僕のことなど誰も気に留めないから、家の者は誰も知らないだろう。 まだ家に帰る気は起きなかった。 だが歩くのも疲れてきて、どこかの店のシャッターにもたれ、空を見上げる。 星や月は嫌味なくらい明るい。きっとこれが綺麗な夜空なのだと思う。 そのまま暫く何もしないでいると、不意に人に囲まれる。 「君、綺麗な顔してるね」 下卑た笑みに、下卑た笑みに、下卑た笑み。 三人の若い男が僕を見ていた。 「ちょっと一緒に行こうよ」 頭の中は冷静だった。 そのはずだが、肩を無理やり抱かれた瞬間、気づけば僕は腕を振り払っていた。 「やめろ! 僕を誰だとっ……」 思わず出た言葉が自分の首を締める。 馬鹿らしい。阿呆みたいだ。 僕はもう、誰でもない。 今まで張っていた虚勢も無意味なものになり、権威を振りかざす権利もなく、そもそも僕の味方は、いない。 「あれ? どうした?」 「怖くなった?」 「威勢がいいのもいいけど、殴られちゃ敵わないからな」 形勢逆転とばかりに薄汚く笑う男たちに肩を抱かれ、暗がりに連れていかれる。 六本の腕が伸びてきて、僕のシャツやズボンを乱し始める。 別に僕が亜樹にやっていたことをされるだけだ。亜樹がどのような恐怖を僕に抱いていたか、知ることができるかもしれない。 いや、僕が恐怖など感じるわけないか。亜樹の恐怖を予想しやすくなるだけだ。 目の前の男たちを眺める。別段、見た目が薄汚いわけではない。だがどこからどう見ても汚らわしかった。 どうやら亜樹には僕がこのように汚く見えていたらしい。その事実には嫌悪を感じる。 「こいつ全然表情うごかねぇのな」 「まあヤるだけなら構わないんじゃね」 冷めた表情の僕を見て、やはり男たちはにやにや笑う。こいつらは顔の口角が上がったまま固まってしまったのではないだろうか。 そんなくだらない思考をしている間に、男らの手が離れていった。 気づけばシャツのボタンは全て外れ、ベルトは緩んでいる。 そして内一人に壁に押し付けられる。 ヤるのは構わないが、ほぐすぐらいはしてほしい。僕は初めてなのだから。 でもやはりどうでもいいと考える自分もいて。 スッと目を閉じる。

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