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Starved heart 3
「おい」
しかし突然男たちのものではない声が降ってくる。
面倒なことにならないことを願いつつ、目を開けて振り向く。
そこには一人の男性がいた。おじさんというには若い。だがこの中の誰よりも歳上ではありそうだ。
暗闇で見てもわかる明るい髪色に、耳には濃い色のピアス。
今僕を襲おうとしている男たちより、よっぽど物騒な見た目だ。
「誰だよ、お前」
「お前らこそ、そいつに何しようとしてる」
「てめーには関係ないだろ」
「黙って見過ごせるかよ」
男性は男たちをかき分けて僕の方へやって来ようとする。しかしそれを男たちが見過ごすはずもない。
「てめっ、邪魔するな」
「三対一で敵うと思ってんのかよ」
「そっちこそ敵うと思ってんじゃ……ねぇ!」
進路を止めに入る男たち。男性はその内の一人を捕まえ、
思い切り殴った。
バキッと大きな音が鳴る。
殴られたやつはあっけなく地面に倒れた。
残った二人は恐ろしげに男性を見る。結局のところ全員意気地なしだったということか。集まらねば何もできない。
「弱いやつが粋がりやがって」
男性は男たちを一睨みすると僕の腕を掴んだ。「来い」と短く言って、男たちから離れた場所へ連れていく。
「大丈夫か?」
男性は問いながら僕の服の乱れを直していった。僕は何も言わず、その様子を何とは無しに眺める。
ちらちらと返事をしない僕へと視線が向けられる。
「綺麗な顔したやつは男も女も関係ないからな。夜中に出歩くな」
見た目や行動に反して面倒みはよさそうだ。よくわからない人間。
「まあ、気をつけろよ」
返事は諦めたのか男性は僕の頭を一回撫でると去っていった。撫でるというより、頭に手を置いた感じだ。
僕は男のどこか逞しい背を、眺めていた。
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