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Starved heart 4
今日も僕は街に出た。
人通りのそこまでない道に立ち止まり、昨日と同じシャッターにもたれた。
暇そうな顔でスマホをいじる。
「ねえ、暇?」
すると案の定、声をかけてくるやつがいる。
自分で待っといてなんだが、見るからに男の人間によく声をかけるものだと思う。
声をかけてきたのはチャラそうな男。昨日と同じタイプだ。
「どこか行かない?」
「……どこでもいい」
「じゃあ一緒に遊んでくれるんだ?」
「……ああ」
「嬉しいな〜、君みたいな綺麗な子となんて」
「……」
「ホテルとか行っちゃう?」
「……お前にその金があればな」
口が滑ってしまう。
あまりにも馬鹿そうな見た目に口調に言葉。それについ苛ついた。
「何それ。こっちが優しくしてやってんのに」
そしてすぐに激するところもいかにも馬鹿だ。
答えるのも阿保らしくて、目の前のチャラ男をただ見る。するとチャラ男はさらに怒りの色を募らせる。
「馬鹿にしてんのかよ!」
鋭い音がして、無理やり顔が横を向く。
遅れてじんっとした痛みが頬を襲う。
ああ、ぶたれたのか。
口の中に血の味が広がる。口の端もヒリヒリする。
口元を指先で拭って、月の光に透かす。やはり血が出ているようだ。
「お前……!」
更に手を振りかぶったチャラ男を冷めた目で見る。しかしその手は止められた。
誰かの手によって。
……やっぱり来た。
そう思う自分に驚くと共に、なんとも言えない感情が湧く。その中には嫌悪もあった。
チャラ男を止めたのは昨日と同じ男性だ。
「何してんだ」
「う、うるせぇな! 何でもねぇよ!」
鋭い眼光に射られたチャラ男はあっさりとその場を去っていった。またもや意気地なし。
「お前も、何してんだ。昨日の今日で」
同じ視線を男性は僕に注ぐ。
僕にだってわからない。
こうして襲われかけていれば、この人は来るだろう。なぜかそう思ったことは認める。
だが会いたかったかと言われれば、わからないと言わざるを得ない。本当にわからないのだ。
こんないかにも馬鹿そうで、まともな道を歩んでいなそうな人間は、僕の中で嫌いな部類に入るはずだった。大嫌いなタイプだ。
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