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Starved heart 10
それから僕は文字通り毎日、誠也の家に通った。
流石に毎日は迷惑かと思う心はあったが、逆に好都合だろうと考え直し。
誠也は毎日僕を出迎えた。
その中で様々な話をした。
ある時は趣味の話になった。
「柊って趣味あんの?」
「特にない」
「じゃあいつも何してんだよ」
「勉強だな」
「うわっ、まじめ野郎だ」
「そういうお前はどうなんだ」
「俺は旅行。海外が特に好きだな」
「そのなりでか」
「それがこれのおかげで馴染めてるんだよ」
金はなさそうだし教養もなさそうなのに旅行。その事実に少なからず驚いた。
またある時は好きな食べ物の話になって。
「お前、好きな食べ物は?」
「……ハンバーグだ」
「へぇ」
「なんだその顔。苛立たしいな」
「いやぁ、なんだかんだ可愛いな」
「ふざけるな。ハンバーグは高級になる食べ物だぞ」
「それは否定しねーな」
「にやにやするな。上手く作れもしないくせに」
「それも否定しねーな。柊は作れんのか?」
「僕も料理は駄目だ」
「同じじゃねーか」
たまたま気が向いて、整理用のグッズをいくつか百均で購入して持っていったこともあった。
「これやる」
「なんだこれ?」
「使うと整理がしやすくなる。こうだ」
「おお〜、すげぇな。こっちはピアス、こっちはリングとかできんだな」
「ああ」
「サンキュー、柊!」
「ふん。これで少しは片付ければいいが」
「可愛くねーやつ」
片付けと言えば誠也は吸い殻の捨て方が本当に最悪だった。
「煙草、吸うんだな」
「おう。だからちょっと外出てくるわ」
「気を使わなくてもいい」
「そうか? なら吸うぞ」
「灰落とすなよ」
「おー、つか灰皿いっぱいだわ」
「おまっ……何そのまま捨てようとしてる!」
「ん? だめかよ?」
「普通は小さいポリ袋に入れてから捨てるんだ」
「へー知らなかった」
「貸せ」
そういえば年齢を聞いた時は意外だった。
「誠也はいくつなんだ」
「歳か? 三十一だよ」
「結構いってるんだな」
「若く見られることは多いぜ」
「……見た目どうにかしたらどうだ。もうおっさんじゃないか」
「うっわ、口の減らないクソ餓鬼だな」
「高校生だから礼儀を知らないんだ」
「ほんっと可愛くねー」
誠也は生意気な僕に怒ったりしなかった。そのおかげで気を遣わず接することができる。キレやすそうだが面倒みの良さがカバーしているのかもしれない。
毎日やることは殆ど会話か沈黙を貫くだった。テレビはなぜかそんなに見ない。
誠也が煙草を吸ってる横で僕はスマホを見たり、お互い何もせず座っていたり、先のようにくだらない言い合いを繰り返したり、様々。
決まって十二時前に追い出されたが、それ以外は特に何も言われなかった。
正直言うと、狭く少し汚い誠也の部屋は、居心地のいい空間だった。
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