「さて、と。返事を聞かせてもらおうか」 「自分で決めつけていただろう」 誠也が体を離して僕の顔を見る。僕は眉を寄せながら言い返した。 わざわざ言う必要もない。 「直接聞きたいだろ。告白したら」 「……ふん」 「答えねぇとキスすっぞ」 不良みたいな柄の悪い目つきが僕を射る。金髪ピアスのくせに瞳は綺麗な黒だ。 それが僕を催促する。 このまま答えなければ、こいつはキスでからかってくるに決まっている。 視線をふいっと逸らす。 「……別に、嫌いではない」 勇気を振り絞った結果は、こんな無愛想な言葉。生まれ持った性格というものだ。仕方ない。 「相変わらず可愛くねーな」 「……んっ」 しかし誠也はそれでも嬉しそうに笑った。今まで見た中で一番。 そしてまた唇が合わさってくる。 何度も離れては、触れ、また離れて、触れて。 いつしか緊張で固く閉ざした唇を誠也が舌で突いてくる。知識でしか知らないが、ディープキスというやつ。 でも素直に従うのは癪で、意地でも唇を開けようとしなかった。すると誠也は無理やり舌をねじ込んでくる。こいつは舌までも力が強いというのか。 「んぅ……はっ……ンッ」 口内に侵入した舌はすぐに僕のを捕らえて絡ませる。擦れて、吸われて、誠也の口に連れ込まれて。 ついていくのが精一杯になっていると、誠也は優しく僕をカーペットに押し倒す。 そのまま暫くキスをされ、やっと離された時には酸欠のような状態になっていた。 息は荒いし、頬は上気しているし、目の端に生理的な涙がにじむ。 「……するのか」 「なに？」 「……セックス」 この場合、僕が挿れられる側だろう。誠也に僕が挿れるイメージが湧いてこない。 「しねーよ。したくてたまらねーけど」 「なぜだ」 「柊の中にはおれ以外にもう一人いるだろ。そいつとケリつけてからだ。おれたちの関係が始まるのはな」 「……キスはしたくせに」 「くそ生意気な餓鬼は純情だな」 鼻と鼻が触れ合いそうな距離でボソボソ話す。こういう雰囲気の場というのが初めてで、違和感を抱かざるを得なかった。 自分から誠也の背中に腕を回し、抱きしめた。顔を首元に置く。 「お前……馬鹿だけど、馬鹿じゃないんだな」 「誰がいつ馬鹿を肯定したよ」 亜樹との関係は結局、うやむやなままになっている。颯太のことがあったから、酷いことをしたのに謝罪すらしていない。本当の気持ちも話していない。 このままでは、いけないのかもしれない。少なくとも誠也と一緒にいたいなら。 「……明日」 たまたま登校日なのだ。亜樹は絶対に来る。ちゃんとけじめをつけよう。 「おう」 短い言葉で理解した誠也は腕の力を強めてきた。はっきり言って少し痛い。 でもその痛みが心地いい。 その日、誠也は初めて僕が泊まることを許した。その代わりというのか、なんなのか、床で寝ようとした僕は、無理やりベッドに連れ込まれはしたが。