216 / 961

Newer image of the future 1

久しぶりや黒くなったな、なんて声の聞こえる廊下を歩いていく。半袖がひらひら揺れて、時々腕にあたる。 校内は夏休みの空気をまとっていた。 喧騒の中を歩いて亜樹の教室まで行く。登校時間よりかなり早めに来てしまったが、はたして亜樹は教室にいた。 「亜樹」 呼ぶと亜樹は僕を見る。少し驚いた顔はしたが、もう恐怖は浮かんでいなかった。 入り口にいる僕のもとまでやってくる。当たり前のように颯太もついてきた。亜樹と一緒にいる姿を見ても、もはや苛立ちの欠片すら浮かんでこない。 「話がある。ついて来てくれるか?」 「えっと……」 亜樹が隣を見る。颯太が小さく頷くのを見て、また亜樹は視線を僕に戻した。 「わかりました」 返事を聞いて僕は歩き出す。亜樹は黙って隣に並ぶ。 腕を掴むことも、俯きながら後ろをついてこられることもない。おまけに隣を歩いている。初めてのことだった。 そのまま生徒会室まで辿り着いた。 亜樹を中へ促し、僕自身も後から入る。亜樹がソファに座ると、僕はその隣に腰掛ける。その方が顔が見えづらい。 だが亜樹は真面目な人間だから隣に座ってなお、僕の顔を見上げる。 丸い瞳や滑らかな肌。可愛らしいこの姿に、僕は惹かれたんだと、ぼんやり思う。 「亜樹。僕は君に散々酷いことを強いた。すまなかった」 「いえっ……もう気にしていないので……」 頭を下げると亜樹はあわあわと手を振る。その様子に見えないように笑みを零した。 次に亜樹が僕を見た時には、もちろんそれは消えている。亜樹は次の言葉を待って、一心に僕を見つめている。 その頬にするりと触れてみる。 「僕はただ君のことが好きなだけだったんだ」 「……へっ?」 存外、告白の言葉はあっさり出てくるものだ。過去のものだから、かもしれない。 亜樹は触れられていることも忘れて、目を丸くする。 気づかないのも無理はない。あんな酷いことをしていたし、亜樹は特別鈍感だから。

ともだちにシェアしよう!