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「当時の僕は不器用でな、いや今もそうかもしれないが……愛情を表現するのがうまくできなかった。亜樹を手に入れたい。そればかりを考えていたら、あんな形になってしまった」
今考えれば後悔するほど、意地汚い方法だ。
自分の立場を利用して、無理やり好きな子を手に入れて。強引に乱れさせて。
「特に一回抱いてしまったことは、すまなかった。颯太を追う亜樹を見たら、どうしようもなく焦って、苛ついた」
衝動に任せて抱いて、気づけば亜樹の様子は酷いものになっていた。
抱いている最中だって、嫌がって泣いているのはわかっていたはずなのに。
「……でも会長は、優しかったですよ。確かに一度はそうでしたけど、それまで抱くこともなかったし、キスだってしなかった。大事なところはちゃんと守ってくれたんだなって、今は思います」
「亜樹……」
「それに颯太と両想いになる前、僕が苦しんでいた時、声かけてくれましたよね」
そう言って亜樹はへにゃりと笑う。呆気にとられてしまう。
本当に亜樹はお人好しだ。
どんなに酷いことをした人間でも、すぐにいいところを見つける。たとえ本人にその気がなかったとしてもだ。
優しいのはどちらなのか。そんなところにも惹かれたのかもしれない。
僕を見て亜樹は微笑んでいる。
その瞳は実直に思いを伝えようとしている。
馬鹿みたいにお人好しで、優しくて、鈍感で、可愛い。そういう人間。
気づけば腕を伸ばして抱き寄せていた。華奢な体は腕に力を込めたら折れてしまいそうだ。
「会長……!」
「頼む。少しだけ」
切実な声を出せば、やはり亜樹は抵抗をやめる。本当に優しい。
垂らした腕が颯太への罪悪感だろう。
そんな亜樹が、僕は本当に、好きだった。
「見つけたのも、出会ったのも、僕が先なのに……やはり僕は、颯太に負けてしまうのだな」
ポツリと僕の呟きが生徒会室に落ちる。
「……会長は颯太と違うものを得ようとして、僕を好きになったんですね」
「何言って……」
亜樹の言葉に驚いて思わず体を離す。覗き込んだ顔は至極真面目な表情だ。
「颯太と恋とは一番かけ離れたものだったから、手に入れれば颯太と差を作れる」
「…………」
「だって会長、一人称も口調も、笑わないところも、服の嗜好とかだって、全部颯太と正反対だから……」
困ったように笑う亜樹が目の前にいる。
不思議なことに亜樹の言葉が募るほど、抵抗は薄くなった。
確かに僕は颯太と違うものを得ようとして躍起になっていたかもしれない。
同じものを持てば、比べられる。そして負ける。だから少しでも颯太から離れようとした。
そうやって無意識に行動していた可能性はある。
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