218 / 961

Newer image of the future 3

「でも会長が僕のことを好いてくれていたのも、ちゃんとわかっています。発端はそうでも、心から僕のこと」 亜樹の肩を掴んでいた手を外す。少し強く掴み過ぎていた。 すると亜樹はその手を取った。 「僕のこと好きになってくれて、それから前に頼みごと聞いてくれて、ありがとうございました」 亜樹の目が潤み、あっという間に涙が落ちた。 水晶のように透き通ったそれは、亜樹の白い肌を滑り落ちていく。素直に美しいと感ぜられた。 「なぜ亜樹が泣く。本当に優しいやつだ」 「……会長の代わりに泣いてるんです」 「言うようになったな。でも罪悪感は抱くなよ。亜樹には颯太がいるように、僕にだって、いるからな」 僕の言葉を聞いて亜樹の口が開いたままになる。徐々に口角が上がっていって、いつしか笑顔を見せていた。 「じゃあ、会長っ……」 「ああ。僕はもう一人じゃない」 僕の返答に亜樹はますます笑顔を深くした。 よかったと小さく言いながら僕の手を強く握って額に持っていく。 亜樹への恋心は過去のものだ。それでもこの様子は可愛いと思う。 こういうさりげない動作が男の気を引くんだろう。颯太は苦労しそうだ。 小さな笑みが漏れる。 「……亜樹、いつか出かけようか。亜樹と、颯太と、僕と……僕の大事な人と、四人で」 少し照れくさい。 それでも本当に出かけたいと思った。誠也にも二人を会わせたいと、思った。 亜樹は勢いよく顔を上げる。 「はい……!」 心底嬉しそうな顔で、亜樹はやはり笑った。 それから手早く涙を拭うとソファから立ち上がる。 「じゃあ僕、行きますね」 「ああ」 ぺこっとお辞儀した亜樹が生徒会室を出ていく。 その背はもう小さく見えなかった。 僕に怯え震えていた亜樹でも、颯太に遠慮ばかりしていた亜樹でもない。 立派な一人の男だ。 「こうして変わっていくのか……」 息を一つ吐き、僕も立ち上がった。

ともだちにシェアしよう!