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ザーザーとシャワーの音が漏れ聞こえてくる。誠也の家について早々、誠也は汗かいたと風呂へ行ってしまった。
僕はベッドを背もたれに座っている。脚を伸ばしすのも中途半端に曲げるのも嫌で、体育座りをしてしまう。
悔しいが、緊張しないわけがない。
けじめをつけたら、関係が始まる。なら今日、これから、始めるつもり、ではないか。
誠也の風呂だって、その表れでは。
ガチャッと風呂のドアの開く音にまで反応してしまう。
すぐに引き戸が開いて誠也が入ってきた。
「柊、シャワーは?」
「……いい」
「なんで縮こまってるんだ?」
「……別に」
膝に顎を埋める僕に誠也が近づいてくる。
シャワー後の熱気が僕を襲った。その温度にすら緊張してしまう。でも何もかも初めてなのだから、仕方ない。
「調子悪いのか?」
「違う」
「どうしたよ、柊〜」
「やめっ……!」
なぜか妙にテンション高めの誠也が僕に手を伸ばす。それに抵抗したら体勢が崩れる。
気づけば誠也が僕の上にのしかかっている。
「あ、阿保!」
「ぐっ!」
手で殴り、足で蹴り、誠也の体をどかす。とにかく誠也から離れたくて、ベッドに登り、角まで行った。
「てめぇっ、痛ぇだろーが……」
激昂した誠也が起き上がり、一瞬僕を見失う。それからすぐに僕を見つけた。
ベッドの上。壁際。蹲る僕。
それを見た誠也は片方の口角を上げた。
「へぇ、昼間からヤると思ったのか。おれはそんなつもりなかったけど、柊はそのつもりだったから、変だったんだな」
「……違う」
思わず否定の言葉を吐いたが、頭の中は焦りで埋まる。顔を見られぬよう誠也に背を向ける。
僕が一人で先走っていただけだった。
確かに今は昼間だし、流石にこいつもすぐする気はなかったということだ。
なら、これでは、僕だけが期待していたみたいになるじゃないか。
ありえない。最悪だ。
こいつにこんな失態を見せてしまうなんて。
「柊」
ギシッとベッドが鳴る。誠也が近づく気配がする。僕はますます壁を向く。
「顔見せろ」
「嫌だ」
「なんでだよ」
「なんでもだ」
「珍しく口が回ってねーな」
「煩い、黙れ」
見せるわけがない。
頬が赤いことも、悔し涙が滲んでいることも、わかっているのだから。せめてこいつが少し遠くにいれば、その間にどうにかできるのに。
「いいから見せろって」
「くそっ! ふざけっ……」
しかし誠也の馬鹿力に僕が勝てるはずもない。背後から肩を掴まれ、振り向かされた。
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