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誠也と初めて愛をまじわしてから数日後、なぜか九条から夕食に招待された。しかも僕だけ。 今さら何のつもりだろう。 そう思う気持ちはないわけではないが、行かざるを得ない。 隙を見せるな、失態を犯すな等々、両親に散々言われてから家を出た。 少し前まで暮らしていた家に着くと、黒服の男が二人出迎えてくれる。案内せずとも大丈夫だが、とりあえず後ろについて歩いた。 深い茶を基調とした廊下を歩き、見慣れた扉の前に辿り着く。 扉の左右についた男が扉を開け、僕は中に入る。 テーブルには既に俊憲さんと颯太が座っていた。 俊憲さんの近くには、いつも必ず傍にいる明恵さんはいなかった。 「柊、よく来てくれた。こちらだ」 俊憲さんは優雅な手つきで自身の向かいの席を示す。僕は大人しくそれに従う。ちなみに颯太は誕生日席と言われる位置だ。僕と俊憲さんの間。 僕が席に着いたのを見ると、部屋に控えているメイドに俊憲さんが目配せをする。 すると数人のメイドが食事を運んできた。 主食、主菜、副菜、汁物。どれも豪華で美味しそうだった。 全て出揃うとメイドは部屋から出て行った。 食べ始める前に話すことがあるということだろう。 食事から俊憲さんへ視線を移す。 その視線が相手のものとぶつかる。 「柊、お前には様々な迷惑をかけたな。すまなかった」 何を言うかと思えば、謝って、なんと頭も下げた。あの、冷たさでできたような人が。 流石の僕もこれは焦る。 「いえ、あの、頭を上げてください……」 「わたしの歪んだ心は、二人の未来ある青年を殺してしまうところだった」 僕の言葉に顔を上げた俊憲さんは、目を細めて呟く。 その口元にはうっすら笑みが浮かび、視線も驚くほど柔らかい。 僕には到底信じられない光景で、颯太に視線を向ける。颯太はごく自然なこととして受け入れていた。 きっと颯太と、それから亜樹が、ここまでこの人を変えたのだろう。 「柊。颯太が九条に戻ることは知っているな?」 「はい」 「颯太が九条の跡取り。柊が久我の跡取り。これで全ては元の形に収まった。だからここから新たに始めたいと思うのだ」 「新たに……?」 「ああ。全てを水に流せとは言えないが、過去は過去として、今度はより良い形で関係を築いていきたい」 颯太に追い縋って、自分自身をも追い詰めていた、かつての俊憲さんは影も形もなかった。 今は未来を見つめ、光の差す双眸を持っている。 俊憲さんは僕と颯太を交互に見た。 「颯太も柊も、年寄りの勝手な願いを、認めてくれるだろうか」 「はい、父さん」 「もちろんです」 僕と颯太の迷いのない回答に、俊憲さんは笑顔で頷いた。

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