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これで話は終わりだろうか。そう思ったがまた俊憲さんから視線を向けられる。 「それからもう一つ、柊に話したい」 「はい」 「柊の目の前で颯太を選んだわたしが言えることではないのかもしれないが……柊、お前は大きな才能を持っている」 「……はい?」 五年間、義理の父だった人の言葉。確かにこの人の口から出た。 耳を疑って、思わず失礼な返答をしてしまう。 「わたしの態度も久我の人間の言葉も、お前の自信を奪ってしまうものばかりだったと思う。だが柊も、颯太と変わらないくらい素晴らしい人材だと、わたしは考えている」 「……は、い。有難うございます……」 耐えきれなくなって俯く。 食事の湯気や香りが感じられる。 有り難すぎる言葉。でも俄かには信じられない。 颯太にいつも僕が負けていたのは事実なのだから。 それに信じるのは、怖い。 居場所を手に入れたばかりなのに、今度は本家の信頼まで、手に入れてしまう。そうしたら戻れなくなる。 また失ったときに、どうなるか。 「贖罪と言うと多少の語弊があるが、何か困ったことがあれば、いつでもわたしたちを頼ってくれていい」 「……はい」 しかし俊憲さんの温かい視線と、颯太の静かな微笑みとを見ていると、どうしようもなく胸に熱が湧いてくる。 それも一つの、事実で。 一歩踏み出してみるのも、ありかもしれないと、思った。 「それから……もし将来、颯太が行き詰まっていたら、柊がどうか助けてやってほしい。颯太と柊が協力しあえば、九条は今までの歴史の中で最も素晴らしい状態になるはずだ」 「はい……抜かりなく」 今度は僕が頭を下げる。 命令だから従うのではない。それが九条と久我のしきたりだからでもない。 俊憲さんの思いと颯太や亜樹の努力に、またもや絆されてしまった。そんなところだ。 「では食事を始めようか。冷めてしまったら困るからな」 「そうですね」 「はい」 俊憲さんと颯太と僕。 信じられない三人が、共に食事をして。それはとても心の温まる時間だった。

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