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食事を終えたあと、泊まりの誘いを断って九条を出た。
空には綺麗な星々が浮かんでいる。
穏やかな足取りで家へと向かいながら、なんとなくスマホを取り出した。指が自然と電話をかける。相手は当然、誠也だ。
五コールの後に誠也は電話に出る。
「おう、柊。珍しいな。どした?」
程よく低い声がスマホの向こうから聞こえてくる。僕の好きな声。
「前に言った九条の父と息子と僕で食事をしたんだ。先ほど」
「おう」
「今まですまなかったと、これから何でも頼ってくれと、そう言われた」
「そうか。よかったな」
「ああ」
スマホの向こうにいる誠也の顔が容易に想像できる。僕のことなのに、笑顔で喜んでくれている。
こんなやつだから一番に教えたいと思うんだ。
「じゃあおれまだ会社だから切るな」
申し訳なさと焦りの入るその声。
電話に出るまで時間がかかったのはそういうことか。会社では普通、私的な電話など出られないのに、僕のために移動してまで電話に出てくれたということだ。
「誠也」
「ん?」
「好きだ」
しんっとスマホの向こうが静まる。それから誠也の吐息がやけに大きく聞こえてきた。
「なあ、もういっか」
興奮した声を出した瞬間、電話を切ってやった。
もう一回はない。気まぐれでもありがたく思え。そう言いたいところだ。
きっと次会った時に誠也は怒るだろう。
少し楽しみで自然と破顔する。
そう思ったら既にもう怒りは届いていた。
"同僚にからかわれただろ。そういうことは二人きりの時に言え!"ってメッセージだ。
餓鬼を打つ暇はなかったのだろうか。そう思うとまた笑ってしまう。
人を殴るような不良で、キレやすく、そうかと思えば面倒みがよくて、優しさも持っていて、掃除も料理も下手くそで、かっこいい。
そんなやつに僕は晴れて、捕まった。
居場所も信頼も一挙に得てしまって不安もあるが、幸せなのもまた事実だった。
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