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逆巻く欲望1
様々なことがあった夏休みも終わり、学校が始まる日になった。
もう今の時代、夏休みが終わったといえど暑さは引かない。夏休みの意味とはいかならむ状態になってしまっている。
だが暑かろうとそうでなかろうと学校は行かなければならない。
当然、颯太と一緒に登校した。
教室のドアを開ければおはようって言葉が飛んできて、それに返す。
「渡来、間宮、おはよ」
「わっ! 清水くん!」
「おお、おはよう」
すると突然、背後から声がかかる。びっくりして振り向くと清水くんだった。
「やっぱり清水くん、灼けたよね」
「ああ、毎日練習ばかりだかんな」
模試の日もそう思ったけど、夏を挟んだら清水くんはとても黒くなった。サッカー部の部長らしいから大変そうだ。
今日からさっそく朝練があったのか、もう既に汗ばんでいる。
ちらりと隣を見てみる。
颯太のスポーツをしている姿、あまり見たことない。体育の授業を見る限り運動神経は良さそうだから、部活をやったとしたらかっこいいのだろうな。
「何?」
「えっ、あっ……颯太も部活やったらかっこいいだろうなって……」
「そんなこと考えてたの〜」
「わっ! ち、ちが……えっと」
焦って本当の答えを言ってしまった。
な、何言ってるんだろう、僕。かっこいいとか言っちゃって、恥ずかしい……
「はいはい、入り口でいちゃつくなー」
清水くんが呆れた声をあげ、僕と颯太の背中を押す。クラスのみんなにも笑われてしまった。
つまりみんなにも今のが聞こえていたんだ。
真っ赤になりながら自分の席まで行く。
「亜樹、顔赤いよ」
「颯太のせいだよっ……」
「えー、俺?」
颯太は照れる様子もなく僕を笑う。これでなんで恥ずかしくないんだろう。
人前でいちゃついているって思われているのに。
唇を尖らせてそっぽを向くとさらりと髪の毛を撫でられる。
「俺は部活入らないよ」
「えっ、どうして?」
「亜樹との時間を大切にしたいから」
「颯太……」
今度は違う意味で顔が熱くなる。
颯太の綺麗な笑顔に釘付けになってしまう。
顔だけ颯太を向いていたのが、自然と体ごとに変わって。颯太しか視界に入らなく……
「ほーい、席つけ」
「……っ!!」
松田先生の声が僕の空気を打ち砕く。
危ない。さっき恥ずかしい思いをしたばかりなのに、もう周りが見えなくなっていた。
「全員いるな?」
松田先生はぐるっと教室を見渡して確認した。それから夏休みが開けての言葉や諸連絡を言った。
「さて、最後に。夏休みが開けたら、あのシーズンがやってくるな? 今日の七時間目のロング使わせてやるから、文化祭でやること決めろよ」
松田先生のその言葉に教室中がわっと湧く。
勉強もちゃんとやれよと松田先生は注意して、教室を出て行った。
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