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逆巻く欲望2
そしてあっという間に七時間目になった。
去年の文化祭はあまり記憶がない。一人だったからつまらなかったのだろう。でも今のクラスなら楽しみだ。
「颯太は何か考えた?」
「うーん、無難なやつでも楽しいと思うよ」
「カフェとか?」
「そうそう」
颯太もどことなく嬉しそうだ。
やはり普通の幸せは、一番の幸せなんだ。
颯太と話している間に、二人のクラスメイトが教卓の前に立った。一人は清水くん、もう一人は松村茂くんという人だ。
二人とも学級委員。
松村くんも清水くんと同じサッカー部で、清水くんがまとめ役なら松村くんはふざけ役といった感じ。
「みんなーなんか思いついたか?」
まず清水くんが声をあげる。
教室からは面白いやつ〜とか楽なやつ〜といった声がちらほら聞こえる。
「おいおい、具体的なのないのかよ?」
その言葉にはみんなしーんと静まる。
このままだと無難なものを選ぶといった方向に行くかもしれない。それもそれで面白そうだから全然構わない。
しかし突然、松村くんが「ふっふっふっ……」と笑い始める。
「そうだと思ったよ、諸君」
「いきなりどうした、茂……」
「そこでオレから提案がある!」
清水くんもクラスのみんなも松村くんの不思議な口調に引き気味だ。
「メイドカフェだ!」
だがそんな雰囲気を物ともせず、ばんっと黒板を叩き、松村くんが叫んだ。
しかし教室は静まる一方。
他のクラスの話し合いの声がうっすら聞こえてくるほどには。
「……何言ってんの?」
やっと声を出せたのは清水くんだった。
「その反応も予想済みさ……。諸君、考えてみたまえよ。売り上げ金はみんなで使えるんだぜ? そしてメイドカフェだぜ?」
「だからそれが意味わかんないんだって」
清水くんがちょっと苛つきつつ、つっこんであげている。すると松村くんはちっちっちと指を振った。
「想像力が足りないね……。男子校でメイドカフェ。なんだそれ、気持ち悪い! でも少し面白そうだから行ってみよう! ってなるだろ!?」
「……否定はしないけど、その先どうするんだよ……。気持ち悪いで終わるかもしれないだろ」
松村くんの興奮とクラスの冷めている雰囲気の対比。
そもそも松村くんは興奮しすぎて言葉遣いを忘れ始めている。
どうなっちゃうんだろう。なんてほとんど他人事に考えながら颯太を見る。颯太もちょうど僕を見ていた。二人して密かに笑う。
「そこで出てくるのが、渡来だ!!」
…………ん?
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