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逆巻く欲望8

順調に文化祭準備を進めていき、間のテストも乗り越え、とうとう前日になった。 メニューや内装、シフト等は既に決まっている。そしてメイド服、ウェイター服もなんとか間に合った。 家に持ち帰ってやったり、隙間時間を使ってなんとかやり遂げた。 「すごい達成感……」 「なかなかの出来栄えだな」 「うん、すごい頑張ったよね」 目の前でメイド服を広げて息を漏らす。 清水くんも颯太も達成感に満ち溢れた表情だった。 それを早速クラスのみんなに見せに行く。 教室は内装準備の真っ只中だ。飾り付けをしたり机のセッティングをしたり、がやがやしている。 「おーい、できたぞ!」 清水くんがその中に割って入ると、みんなが振り向く。 「おおお!! すげぇな、それ!」 まず最初に声をあげたのは松村くんだった。 そしてみんな仕事を放り出して僕たちに寄ってくる。 それぞれに衣装を渡していく。 「なぁなぁ、これ着てみよーぜ! ウェイターとメイドはあっちで、他のみんなはここで!」 松村くんの言葉にみんな賛同する。 僕と颯太はそれぞれメイド服とウェイター服を持って影に行き、清水くんはただの前掛けを手に取って着替え始める。 颯太はズボンを履き変えて蝶ネクタイやベストなどを着るだけだけど、僕は一旦全て脱がなければならない。 颯太と二人、端の方で着替えた。 自分で作ったのは達成感があるが、自分で着るのはやはり恥ずかしい。 目の前のフリフリな白と黒を、緊張で強張る手で身につけていった。 慣れないスカートは膝丈といえどスースーして違和感があるし、男がフリルなんてって気持ちもある。 「亜樹、着れた?」 「あ、うん」 お互い背を向けあって着替えていたのを、同時に振り返る。 息を、飲んだ。 教室のざわめきが消える。 「颯太……」 普段着でも制服でもない、颯太。 漫画の中から出てきたようにスタイルもよくて、かっこよくて、ぽかんと口を開けて、見入ってしまう。 「似合ってるかな……」 「うん、颯太……かっこいい」 「ありがと。亜樹も可愛いよ」 「あっ……でも、男が着てるの丸出しだよね」 颯太がはにかんで問うてくるのになんとか返すと、嬉しそうに微笑んだ。 それから僕に一歩近づいて頬をひとなでする。 だけど今の僕は女装感が溢れている気がする。だってウィッグがないのだ。ウィッグは本番だけということで、今日この場にはない。 「ウィッグなんかつけなくても十分可愛いのに。俺はつけないほうがきっと好き」 「ひっ……ちょっと!」 颯太はニコニコ笑いながらさりげなくスカートをめくろうとする。しかもお尻の方から。 慌てて裾を掴んで下に引っ張る。

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