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熱と騒然と寂寥と5

○ ● ○ いつも以上にざわざわと騒がしい校内。その中には若い女性の声もある。 とうとう二日目が始まってしまった。 でも文化祭さえ終われば、嫉妬の回数も減るだろう。そうしたら颯太にも普通に接することができるかもしれない。だから何事もなく過ぎ去ってくれればいいのだけど……。 今日もメイド服に身を通し、教室内で動き回る。昨日と変わらずなかなかにお客さんは入ってくれている。 そして今日も颯太は女の子に話しかけられている。 その様子を少し見つつちゃんと注文は受ける。 嫌なら見なければいいのに、見てしまうあたり僕は馬鹿なのだろう。 「えっと、アイスコーヒーとアイスミルクティー一つずつ」 「了解」 料理係の人にそう伝えて、飲み物だけなのでそのまま完成品を受け取った。シロップとミルクを二つずつ貰い、盆に乗せて持っていく。 頼んだのは男女のカップル。 初デートなのかもしれない。お互い照れている感じだった。 「お待たせしました」 「あ、ありがとうございます」 「どうも」 それぞれの前に飲み物を置くとお礼を言ってもらえる。こういう態度は少し嬉しいかもしれない。 こういうタイプの人たちだからっていうのは、ないと言っておこう。 「ねぇ! 明美キスしちゃいなよ〜!!」 その時、急に耳を貫く高い声が聞こえる。 それはいかにも派手な女子たちが、集団だからこそ興奮して出すような言葉と声。 すごく嫌な予感がする。 心は恐れて、しかし顔は素早くその出どころを見 る。 「そう……た……」 僕が見たのはちょうど颯太の頬に女の子の唇が触れるところだった。 さっきの大声には他の人も気づいていて、大勢が見る中でのキスだった。 女の子に囲まれた颯太はキスをされて、その顔はきゃーっと言いつつ動き出した女子たちに遮られた。 何がどうなってこの結果に至ったとか、どうでもいい。とにかく僕にはショックだった。 可愛らしい、子が、僕と性別の違う、子が、颯太にキスをした。 盆を持つ手が震える。飲み物を置いた後でよかった。

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