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ご注文は10

「裸の上に俺の服一枚だけ嬉しそうに着ちゃって……」 「あっ、えっと……」 「しかも白い脚、覗かせちゃって……」 颯太の笑顔が妖艶なものに変わる。 それをきっかけに自分の行動を思い出す。 颯太の目の前でほとんど裸のようなもので立ち上がり、嬉しそうに袖の匂いを嗅いだ。 そういえばやけに嬉しそうに立ち上がってと、颯太は言っていたし……。 自分の犯したことに一気に頬が熱くなる。 「可愛いね、あーき」 「い、いじわる……」 するりと颯太が抱きついてくる。 ずるい。颯太はこうなることがわかっていて、恥ずかしがるってわかっていて、わざわざ着せたんだ。 寝ている僕に。寒いとか口実作って。 「ひゃっ、や……」 その手が服に入り込んでお尻をさする。下着の上から孔をなぞられれば、ピクッと体が反応してしまう。 体をよじって颯太の腕から抜け出すと、ベッドの上へ逃げる。颯太に背を向けて手で顔を覆う。 悔しいのか、恥ずかしいのか、興奮してしまったのか。 何が何だかわからないけど涙が滲む。 「……亜樹? もしかして……泣いてる? そんなに嫌だった?」 そのまま動かないでいると、颯太が心配そうな声を出す。 そういえばお酒を飲んだ時のうっすらした記憶だと、颯太は僕の涙に弱かった気がする。 そう気づくとむくむく悪戯心が湧いてくるもの。 「亜樹、ごめん。泣かないで。ちょっと調子乗っちゃった」 ベッドがギシッと音を立て、颯太が僕の背後にやってくる。優しく頭を撫でられたあと、その腕が僕を包み込む。 僕が本気で泣くと、こんなしおらしくなるんだ。 いつもは僕がからかわれているけど、今は僕がからかっている。そう思うと、物凄く、楽しい。 「……やだ」 「ごめんね。彼シャツやってみたかったんだよ」 「……からかうのが、いじわる」 「うん。ごめん、亜樹。何でもするから」 楽しい。すごく楽しい。 でもあまりやりすぎると可哀想だ。何でもするなんてちょうどいい言葉もくれたし。 手を外して振り返る。 「じゃあキスして?」 「亜樹?」 にやって笑いながら颯太を見る。すると驚いた顔で頓狂な声を上げる颯太。 その顔がまた面白くてふふって笑い声が漏れる。 「あーもう、やられた!」 「あはは! いつものお返し」 「この!」 颯太は悔しそうに、でも楽しそうに笑うと僕にのしかかってくる。ぎゅうっと思い切り力を入れて抱きしめられるから、わーって声を上げて逃げようとする。 何か悟ったふりをして大人びた振る舞いをしようとするのではなくて、こうやって高校生らしく笑い合える時間。 そんな時間もとても大切で、幸せだと思った。

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