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邂逅と厭忌は紙一重3

「一緒に遊んだりとかするような友達?」 「そうなると思います」 「今時の男子高生ってどこで遊ぶの?」 「街に出たりとか、そんな感じです」 「曖昧ねぇ……。じゃあよく遊びに行く店の名前とかは?」 「色々な場所に行くので」 「うーん、方向変えよっかな。颯太くんの女の子のタイプとかわかる?」 「ちょっ……下田さん……」 「いいじゃない」 次から次へと繰り出される質問の答えは全て最低限の情報量。流石に焦れたのか直接的な質問に変えてくる。 颯太は焦って下田さんを止めるが、さらりと笑顔でかわす。 「で、渡来くん」 「わかんないですけど……たぶん可愛い系だと思いますよ、僕は」 下田さんの眉がピクッと動く。それはすぐに笑顔に塗り潰された。 僕だって挑発の仕方くらい知っている。少しくらい言い返したってバチは当たらないはずだ。 テーブルに隠した拳は少し震えている。でも僕にしては頑張った。 それにそもそも嘘はついていない。好みとまではいかないかもしれないが、少なくとも僕は綺麗よりは可愛いに近い顔立ちだと思う。 もう諦めたのか下田さんは矛先を杏ちゃんに向ける。整った顔が杏ちゃんを見た。 「杏ちゃん、だっけ?」 「うん」 「杏ちゃんって渡来くんとどう知り合ったの? 随分年の離れたお友達よね」 「今年の夏頃に公園でたまたま会ったの。それであたし、一目見て恋しちゃったの!」 「あら、素敵」 よかったのか、悪いのか。 杏ちゃんは待ってましたとばかりに自分のことを話し始める。その目はキラキラ光っていた。 どうやら杏ちゃんは怯えていないようだ。黙っていたのもおそらく話し出すタイミングを窺っていただけなのだろう。 あれほどの行動力を持つだけはある。 ただ颯太の目の前での告白は少し困るかも……。気まずいといえば、気まずいし。 「でもどこの誰かもわからなくて諦めかけていたんだ……でもね、今日たまたま道で会ったの!」 「運命的ね〜。だから声をかけたんだ」 「うん! ねね、お姉さんとお兄さんはデートしてるの?」 「そうよ。デート、してるの」 「そうなんだ! あたしと亜樹くんと同じだね」 下田さんは"デート"のところで僕をちらりと見る。 お互いの知らないところでお互いが見知らぬ女とデート。それをまざまざと見せつけることで仲違いさせようとしているんだろう。 あいにく僕と颯太の仲はそんなことでは崩れない。少し気まずいだけ。そんなことで離れるならとっくに別れている。 「あたしたちは付き合う前のデートだけど、お姉さんたちはどっち?」 「杏ちゃん、俺たちは付き合っていないよ。そもそも今日だってデートというより、たまたま一緒に出かけているだけなんだ」 「そうなの?」 下田さんが答える前にすかさず颯太が答える。子供に向ける優しい笑顔だ。 隣の下田さんはそんな颯太を笑顔で見やる。 「でももうすぐ付き合う予定なのよ」 「そうなんだ?」 「ええ」 ぴとっと体……主に胸を颯太につけ、下から顔を覗き込む。颯太は露骨に嫌な顔をした。 ここまでされてめげないんだ。たぶん二人きりの時もそんな調子だったろうに。打たれ強いのか、悪意に慣れているのか。

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