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邂逅と厭忌は紙一重9

「杏ちゃんの行きたいところってどこなの?」 「もうすぐつくよ!」 杏ちゃんとモールの専門店街を並んで歩いて行く。 すると小学生向けの服屋が見えてきた。看板はピンク色。中は可愛らしい服から少し大人っぽいものまで色々売っている。 今時の小学生は服にも拘るらしい。僕としては少し驚きだ。 「ここでずっとお洋服買いたいって思ってたんだ〜!」 「そうなんだ。可愛いお店だね」 「うん!」 杏ちゃんはワンピースのコーナーに向かう。 前の時もワンピースだったし、きっと好きなのだろう。活発すぎるから少し心配になるけれど。 杏ちゃんは僕の手を離し、ハンガーをかき分けてデザインを見ていく。 「亜樹くん、見て! 似合う?」 お気に入りのを見つけたのか、一つ手に取る。 それはピンク色の生地に花柄がプリントされた可愛らしいワンピースだった。 杏ちゃんは体の前にかざして僕に見せる。目鼻立ちがはっきりしているけど、まだ幼さは残るから似合っている。 「杏ちゃんによく似合ってるよ。可愛い」 「ほんと? 嬉しい! これ買おうかな」 僕が褒めるとポッと頬を染める杏ちゃん。 こういう反応もするんだ。女の子って可愛いな。 僕の周りには女の子がいないから余計にそう感じられる。 杏ちゃんはワンピースを見つめて微笑んでいた。 「あっ、でも待って」 しかし思い出したように杏ちゃんはまたワンピースの束に向かう。 そうして取り出したのは先に見せてくれたものと同じデザイン。それの白色バージョンだ。 杏ちゃんはそれを並べて体の前にかざす。 「この二つならどっちが大人っぽい?」 「うーん……どっちも杏ちゃんによく似合うけど、大人っぽさは白かなぁ」 「そっか! じゃあ白にする〜」 ニコニコ嬉しそうに笑いながら杏ちゃんはピンクのワンピースを元に戻す。それからレジに向かった。 きっと大人に見せたい年頃なのだろう。男子は子供っぽいと言っていたし。 会計を済ませた杏ちゃんと店を出る。 「杏ちゃん、それ持つよ」 「えっ、いいよ」 「僕だって男なんだからそれくらいやるよ? 両手ふさがったら転けちゃうかもだし」 「そんな子供じゃないもん! ……って、両手?」 ムッと僕を睨んだ杏ちゃんだったが、すぐに驚いた顔をする。表情が豊かだ。 そんな彼女に僕は手を差し出す。 「手繋ぐんでしょ?」 「あ……うん」 するとなぜか杏ちゃんは急に静かになってしまう。そっと手を握って、荷物は僕に差し出す。俯いたその顔は少し赤い。 そうか。僕から行動することはなかったから。 今日はずっと腕を組むか手を繋ぐかしていたからつい当たり前に思ってしまった。 僕にとっては可愛い妹みたいな感じだけど、杏ちゃんはちゃんと僕を想ってくれている。期待させるような行動は控えた方がいいのに。 「次はどこ行くの?」 「えっと、こっち!」 何もなかったように話しかければ杏ちゃんはまた元気に声を上げた。

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