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メイド冥土11

しんと静まる控え室の中で僕は着替え始めた。 紙袋に苦い思いでメイド服をしまい、自分の服を身につける。 その紙袋と自分の荷物を持って控え室を出た。 念のためウィッグはそのままだ。誰かに遭遇しても、ボーイッシュな格好が好きなんだねで済むと思う。たぶん。 周りの様子を伺いながら、廊下を抜けて二階へ行く。 目指すは颯太の部屋。階段からすぐのところでよかった。 最後は駆け足でドアのもとまで行き、ノックもせずに中に入る。 颯太はベッドに座っていた。音に気づいて、いやおそらく僕を待っていたんだろう、すぐに僕の姿を捉える。 「ウィッグそのままなんだ?」 「言いたいこと言ったら、帰る」 「一緒に寝ないの?」 「……そしたらまた変なことする」 「しないから、おいで」 じとっと僕が颯太を睨むと、颯太は苦笑する。やりすぎたかってその表情は語っている。 でも優しい声音で言って、両腕を広げる。 そうやって抱きしめようとすれば僕が流されると思ってるんだ。今日は絶対に流されない。少なくとも僕からは行かない。 視線を鋭くしてふるふる首を振る。 「……わかった。じゃあ亜樹の言いたいこと言って」 颯太は諦めて腕を下ろす。 僕はドアに背をつける。 溜めてきた文句を言うべき時は今。 「メイドだってこと黙ってたの、怒ってる。いきなり女装で、すごく恥ずかしいし、不安だった」 「うん。亜樹の驚く顔見たくて調子乗った」 「颯太のお父さんに内緒っていうのも、すごく緊張した」 「ごめんね。バイト以外で働くにはこうするしかなかった」 颯太の弁明がするする頭に入ってくる。 こんなのただの言い訳かもしれないけど、苛立ちは感じなかった。おかげで頭が整理されていく。 「……あと、部屋行った時、あんなことするの……すごく、恥ずかしかった……僕、仕事中だし、颯太の実家、なのに……」 「うん」 「なんで言い訳しないの、ばか……」 目が潤む。 その時のことを思い出して、情けなさとか哀しさとかが湧き出てくる。 少し俯いて指先で涙を拭った。 怒りに来たのに結局泣いちゃって。 「……僕もう帰る」 家帰って、ちゃんと寝て、また明日働いて。 一回寝れば気持ちの整理もつくはずだから。そしたら颯太とまたぎゅってできるから。

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