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華やぐ心5
「それで何にするか決めたの?」
「うーん……清水くんだったら何がいいと思う?」
モールに入ると清水くんが問うてくる。僕は唸って清水くんに助けを求めた。すると瞬きもせずに清水くんは僕を見つめた。
「渡来が服脱いで体にリボン巻きつけて、『プレゼントは僕だよ』とか言えば、間宮喜ぶんじゃね?」
「なっ……」
カァッと頭に血がのぼる。
だって、だって、何それ。全裸にリボンで、プレゼントは……僕? そんなの恥ずかしすぎる。そもそも僕がプレゼントでも嬉しくない。というかプレゼントも何も、もう僕は颯太のものだ。
わなわな唇を震わせている僕を、清水くんは歯を見せて眺めていた。
本気かどうかは知らないけど、とにかく清水くんは僕で楽しんでるんだということは確か。
「とりあえず専門店街に行く!」
「ごめんって、渡来」
清水くんを無視して僕は先に歩き出した。
清水くんの提案はもちろん受け入れない。かといって僕らしいものなんて結局思いつかなかったから、最初に思いついたマフラーにしようと考えている。
颯太はいつも手袋以外の防寒具をつけていない。見ているこっちが寒そうに思えるのだ。
颯太に似合いそうなシンプルでシックな雰囲気の服屋を見つけるとそこへ入った。
清水くんは看板を見ると少し躊躇した。
「俺役立つかなぁ……センスとかねぇと思うけど」
「僕一人じゃ不安だったの……。何でもいいから助言ください」
「うーん、わかった。できる限り頑張る」
清水くんが頬をぽりぽり掻いてニッと笑う。
僕と清水くんは服の間を抜けて、マフラーが置いてあるコーナーにたどり着いた。冬だから当然種類も豊富だ。
とりあえずベージュにこげ茶の線が入ったのマフラーを手に取った。
「清水くんこれ巻いてくれる?」
「おう」
清水くんは自分のマフラーを外してカバンにしまい、僕の渡した方を身につけた。
二人して近くの鏡を覗く。
「うーん……高校生がつけるには大人っぽすぎねぇ?」
「そうかもしれない……。社会人みたい」
颯太なら似合うだろうけど、これはもっと大人になってからつければいい。今は高校生らしいものを楽しんで欲しい。
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