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華やぐ心7

「清水くん、ありがとう」 「いいよ、これくらい」 やっぱりコミュニケーション下手だと痛感すると共に、当たり前にこなす清水くんに憧れる。 清水くんの笑顔がすごく眩しく感じた。 少し待っていれば、店員さんはすぐに戻ってきた。 「一点だけですが在庫がありました。こちらでお間違いないですか?」 「はい。大丈夫です」 清水くんは笑顔で受け取って、僕に手渡してくれる。また小さくお礼をしてから会計を済ませた。 ほくほくした気分で店を出る。 「よかったな」 「清水くんのお陰だよ。ありがとう」 「見つけたのは渡来だよ」 「でも清水くんがいなかったら買えなかった」 「そっか。役に立てたならよかった」 「うん」 溢れ出る笑顔を抑えようともせずに歩いていく。手に持つ袋を見るたびににやにやしてしまう。 颯太は喜んでくれるかな。 そうやってどこかふわふわした足取りで出口に向かっていった。 ……と、その最中にある店が目に入る。 「……あっ」 「どうした?」 「ちょっと待ってて」 清水くんをその場に残してその店に駆けていく。 あった。僕らしいもの、いや、僕と颯太らしいもの。しかも颯太に絶対似合うもの。 これは買う以外の選択肢はない。こんなにぴったりなものを見つけられるなんて、目を疑う。まさか偽物なんてことは……ない。 すぐさまそれを買った。 そして清水くんのところへ戻る。 「なんか見つけたの?」 「うん。これ」 更に笑顔を広げながら清水くんにちょこっとだけ見せる。でも清水くんは少し不思議そうな顔をした。 無理もない。僕と颯太以外にこれの必然性はわからないだろう。 「間宮にきっと似合うな」 「うん」 清水くんはそれでも笑ってくれた。 僕の贔屓目でなく、颯太に合うみたいでよかった。 旅行をますます楽しみに思いながら、僕は清水くんと途中まで一緒に帰ったのだった。

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